終業時間は17時、週2日は休みと決めている

【有坪】つくだ農園では、何人くらいが作業をしているのですか?

【渡辺】現在のつくだ農園は、基本的には、僕や妻を含めて週5日の勤務が4人、週3日の勤務が3人の7人体制です。それから、わが家は手のかかる年頃の子どもが3人いることもあって、終業時間は17時で、週2日を休みとしています。繁忙期以外は、残業や休日出勤はやりません。家族の時間を作業時間に充てて、夜も寝ずに働けば、収入は増えるでしょう。でもそれはしません。

なぜなら、僕らはお金もうけのためだけに有機農家をしているわけではないからです。あくまで「安全・安心な食べ物を作りたい」という軸があり、その中には「家族を大切にしたい」という思いも含まれています。ですから、基本的に仕事は17時で終わりにしている。つまり、農家をする目的、その栽培方法を選ぶ目的というものをしっかり持っていれば、ブレることなく農業を続けていくことができるということです。

【有坪】でも、もちろん食べていくだけのお金は稼がないといけない。

【渡辺】当然です。そのバランスの取り方が難しいわけですけども、なんとかつくだ農園ではそれを成り立たせることができています。中には、子どもが寝てから作業をしているという人もいますけど、僕はそうしません。

また、日曜と月曜がうちの休みになるのですが、なるべく日曜日はどこかに出掛けるなど、家族全員で過ごす時間を大切にしています。月曜は、子どもが保育園や学校に行って夫婦だけになる時間があるので、必要な買い物をしたり、できていなかった家事をしたりして、過ごしています。

10年続けた「朝市」への出店で学んだこと

【有坪】これから有機農家をやりたいという人に向けて、何か具体的なアドバイスはありますか?

【渡辺】自分の過去を振り返ってみると、10年間続けた朝市への出店がすごく貴重だったと感じています。朝市は自分が店に立って、じかにお客さまと会話をしながら販売する場になります。

そうすると、まわりの農家さんのお店ではなく、なぜ自分のところで買ってくれるのか、どんな野菜が選ばれるのかといったことを肌で感じることができます。同じ種類の野菜でも、どんな状態のものが、どんな値付けだと売れるのかも感覚でわかってきます。

【有坪】具体的なエピソードでも教えてください。

有坪民雄『農業に転職! 就農は「経営計画」で9割決まる』(プレジデント社)

【渡辺】大原は料理人の買い付けも多いので、農家側も目で見てすぐにわかるような特徴的な野菜を作るケースが多いんです。中には「どうやって食べるのか」と疑問に思うような野菜が並ぶこともあります。

そういったパッと見で美しい野菜を買うお客さんは、一般的な野菜も同時に買ってくれる傾向が見られたので、次の出店のときに値付けや商品の陳列を工夫したこともあります。すると実際に売り上げが変わったりするんです。そういう経験は、取引先との交渉時や、出荷のときに生きていると感じます。

【有坪】その他にも何かありますか?

【渡辺】あとは、子どもを産む前は、なるべくお金を貯めたほうがいいってことですかね(笑)。夫婦2人だけのときは、今に比べて本当に金銭的にラクでしたから。

【有坪】実は、私も子どもが4人います。本当にお金がかかりましたね。びっくりしました(笑)。本日はどうもありがとうございました。

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