神戸市はマンション開発で揉めている場合ではない!

大阪から電車で40分という便利な立地の神戸市が、駅直結タワーマンションを開発して売ることは短期的には簡単なことです。

しかしながら、マンション分譲で神戸市の競争力はまったく上がりません。今ある魅力を単に切り売りするだけです。駅前の敷地にタワーマンション開発して数千人集めたところで、神戸市が抱える「衰退する都市問題」に貢献するわけでもありません。

大阪市内では梅田駅周辺、なんば駅周辺など各種主要駅周辺の再開発計画も進んでいます。これまでは大阪市内で開発が制限されていたこともあり、企業や人を受け入れるという選択肢がなく、追い出されていったわけですが、今後はそういう押し出し需要も低下していきます。

さらに京都と滋賀、大阪と神戸の間でもさまざまな開発が行われ、西宮北口などの人気エリアも続々と出現しています。つまりは、みんなが同じ競争軸で開発競争しているわけですが、神戸市はそのような競争に巻き込まれるべき都市ではないのです。

そもそも神戸市は、開国後に築港され、輸出入の拠点となりました。世界からヒト・モノ・カネを輸入し、それを地場品で置換する「輸入置換」で国産化し、輸出へとつなげていく日本産業の重要拠点であり、都市開発においても「株式会社神戸」と称されるほど日本有数の注目される都市でした。ところが平成になりバブル崩壊、阪神淡路大震災に見舞われました。平成の31年間は、神戸市にとって非常に厳しい時代だったといえます。

だからこそ今さら、駅前でタワーマンション開発をする、しないと他の都市の真似事のような小さな話で揉めているような場合ではない。今こそ、神戸市が次の時代に何で飯を食っていくのかということに官民両方が向き合う必要があります。

勝機は「ローテクとライフスタイル」

では神戸市が今やるべきは何か。それは次の時代の産業集積をどのように目指すのかを決めることです。

兵庫県内は歴史的にも皮革産業など含めたローテク産業の集積があった地域。私はもう一度、競争の激しいハイテクよりもローテク産業を伸ばしていくべきだと考えます。

実際、フランスやイタリアの産業として皮革産業は競争力があります。儲からないようなイメージのローテク分野ですが、先日ルイ・ヴィトンなどを保有するLVMHのCEOの総資産がビル・ゲイツを超えるなど、ローテクなブランドビジネスはハイテクに負けません。

また、世界的にアウトドアブランドなど都市近郊型のライフスタイル産業は成長しています。大都市圏に位置しながら、山と海があるという強みを生かした、食やアウトドアなどライフスタイル産業の集積を追求する戦略も有効でしょう。

首都圏では都心部とはちがう環境を求めて、海沿いの鎌倉、小田原などをあえて選択して居住し、リモートワークもしくは起業する人が増加しています。新たな産業集積、ライフスタイルの実現を進めた結果、積極的に神戸市を選択してもらえるようになるのが健全な都市発展といえます。