タワマン開発の3つの問題点

そのような中で、神戸市が駅前周辺地区におけるタワーマンション開発に待ったをかけ、注目を集めています。

神戸市は、現在三宮駅周辺を大きく再編する計画を推進。さらに既存のタワーマンション管理費の状況なども細かく調査をかけた結果、極めて高い確率で将来的に問題が起こると判断し、規制を行うことにしています。

とはいえ、神戸市の規制は緩やかです。完全に駅前エリアでのマンションを禁止しているのではなく、新たに建てる敷地面積(建物を建てる土地の面積)1000㎡以上のビルの住宅部分の容積率(敷地面積に対する建築物の延べ面積の割合)を400%までに制限するというルールです。

これにより、ビルを建てる敷地面積に対し、建物の延べ面積を4倍までの、中層程度のマンション開発に実質的に制限し、超高層のタワーマンションを規制しています。

つまり神戸市は単にマンションを排除しようとするではなく、一箇所で需要を食い切るタワーマンションよりも、都市計画にもとづき、インフラ負荷も少ないかたちで適切にマンションを分散配置しようとしているかたちです。

そもそもタワーマンション開発には、前述のような短期的メリットだけでなく、中長期で懸念される以下3つの問題があります。

①道路、上下水道、学校などさまざまな公共インフラの追加投資が必要となること
②近しい所得と年齢の世帯が集中することで、一斉に年老いていくこと
③将来の建て替えの調整が難しく、さらに大きな規模の再々開発を実現しなくてはならないこと

東京都区部のように流入が続き、平均所得も高い大きな市場が存在する地域であれば、タワーマンションの維持管理も、住み替え需要も、再々開発というのもまだ可能性があります。

しかし人口減少が著しく、産業空洞化も進み所得が伸び悩む地方都市であれば、中長期のリスクを見据えて警戒するのは当然といえます。さらに今でも余剰を多く抱えるインフラや学校を局地的に増設するなどの行政負担もまたナンセンスであり、規制や特定地域誘導を図るのが適切です。

高度経済成長期の「団地、ニュータウン」と同じ構造

同一時期に一斉に入居した人たちが高齢化、空き室だらけとなって廃虚化する問題は、高度経済成長期に開発された団地、ニュータウンの多くがすでに経験していることです。短期的には需要があったとしても、供給を一定制限しなければいずれ都市全体の問題になっていきます。

つまり、タワーマンションが将来抱え込むであろう問題は、いつか来た道で予想可能な範囲なのです。

これらの問題については、都内自治体などでも認識しています。東京都中央区では、すでに住宅の容積率緩和制度を廃止し、ホテルや商業施設への容積率緩和制度に転換を図り、江東区もファミリー向けを制限しはじめたところです。

都心部の旺盛な需要がある立地でも、課題を認識し、中長期での持続可能性を考え、タワーマンションの供給について制限を与え始めています。ましてや地方都市の情勢は厳しく、東京都区部より厳しい規制を検討するのが妥当です。

神戸市は全国政令市でも人口減少が進んでいる自治体です。将来的に再々開発が必要となり老朽化が進むであろう2060年には、2010年より3割以上の人口減少が予想されています。

そのような状況下で一箇所のタワーマンションで住居需要の多くを使い切ってしまうのは、都市全体の衰退を招くリスクが高いのです。そういう意味では、神戸市の三宮周辺での判断は極めて妥当であり、むしろ住宅用容積率はさらに絞っても良いくらいだと思います。

さらに売り切り型の分譲方式では、直近は維持管理に問題なくとも50年後など将来には建て替え問題が立ちふさがる可能性が高いです。一定期間だけの不動産権利を購入する定期借地方式での分譲、もしくはどこかの法人が全体のオーナーとなり、総定期借家に制限するなど、将来の再々開発、解体を見越したコントロールがあってよいでしょう。