美術館のように楽しめる売場

蔦屋家電+に展示された、Eco-Drive Riiiver。その場で予約することもできる。売り場の声は販売員を通じてメーカーにフィードバックされる。

オープン当初から家電業界に新たな風を吹き込んできた蔦屋家電が今年の4月にオープンしたのが蔦屋家電+という新たな売場だ。

これまで家電業界は小売店が買い切り型で仕入れるのが一般的だったが、蔦屋家電+ではメーカーに出店料として一定金額を支払ってもらうことで、店舗で販売をせずとも収益が上がるモデルに挑戦している。

メーカーは蔦屋家電の売場に商品を陳列できるだけではなく、売場に設置されたAIカメラを通して顧客の年齢や滞在時間といったデータを取得したり、販売スタッフが接客を通してヒアリングした情報を受け取ることができる。

商品説明が表示されたモニターとともに商品がズラリと並べられた売場は店舗というよりも珍しいものが並ぶ美術館のような造りになっており、QRコードからネット通販サイトやホームページに飛べることはもちろん、その場で購入もできる。

「売る」がKPIではないからこそ売れる

蔦屋家電+が生まれた背景には、これまでのビジネスモデルでは販売スタッフの接客が「売るためのコミュニケーション」に終始してしまい、結果的に販売につながらないという課題があった。

家電量販店に限らず、小売店は仕入れた商品を売ることがもっとも大きな収益源であり、販売スタッフの売り上げノルマが厳しいとうわさされるブランドや小売店も少なくない。

しかし売ることを目的としたコミュニケーションは顧客に不信感を植え付け、接客を嫌う顧客がオンラインに流れていってしまうという現象も起きている。

そこで売ることをKPIにせず、顧客が商品を体験しそのよさを感じてもらうことを最優先にした売り場として生まれたのが蔦屋家電+だ。

今年の4月に実験的に始まった売場は想像以上に顧客からの反応がよく、手応えを感じたことから2カ月後の6月には2階のイベントスペースから1階の一等地に移設を決定。現在蔦屋家電の顔ともいえる場所で顧客を出迎えている。