人が陥りやすい「集団精神病」の3つのパターン
精神分析学の立場では、社会心理学のように実験をしたわけではないが、「集団」の人間観察からさまざまな仮説が呈されている。
精神分析を集団治療に応用したことで知られるウィルフレッド・ビオンという精神分析医がいた。人間がなんらかの集団になったとき、きちんとした“課題”が与えられないと不安になって、一種の集団精神病のような状態になるという観察をしている。ビオンによれば、人間はそうした不安に対処して、集団でまとまろうとする傾向があり、以下の3つのパターンをとるという。
ひとつは、「依存グループ」といわれるもので、メシア(救世主)のような強いリーダーにみんなが頼って集団がまとまろうとする心理である。国の混乱期に独裁者が現れやすいのもこの心理が反映されていると考えられる。
例えば、ロシアのプーチン大統領にしても、アメリカのトランプ大統領にしても、国内の混乱に乗じて、救世主に見えるようにふるまい、国民のかなりの部分を「依存グループ」にして、選挙での強みにつなげている(依存グループの心理でいる人は投票率が高いので、支持率以上の得票につながる)。
文在寅大統領は「反日」を利用して韓国国民を操作
2つ目は、「闘争・逃避グループ」といわれるもので、グループの外側か内側に仮想の敵を作って、みんなでそれと闘おうとしたり、みんなでそれから逃げようとしたりすることで集団がまとまろうとする心理である。
韓国の文在寅大統領が国民からの支持率を高めるために「反日感情」を利用するのはこの心理を応用したものだ。現実に韓国の市民がこの集団心理にまきこまれる、反日で国がひとつにまとまってしまう。
3つ目は、「つがいグループ」というもので、集団の中でカップルが生まれるとみんなで祝福することでグループがまとまろうとする心理だ。これは、つがいが生み出す子供に期待するという思いが含まれており、基本的にはめでたいことをみんなで祝い、未来への希望でグループがまとまる効果がある。2020東京五輪の招致が決まった際に、日本中が祝賀ムードになり、景気が好転するという希望が一時みちあふれたというのが、この心理を表すいい例だろう。