「保健室の先生のような存在」として社員を支える

会社が大きく舵をきったことは、社員たちにも大きなインパクトを与えた。そんな社員たちの動揺や不安を敏感に感じ取った社長は、「社員たちに保健室の先生のような存在が必要」と私のところに外部メンターの依頼があった。

20代半ばの若手女性社員は、メンタリングの場で悩みを打ち明けた一人だ。2020年春入社予定の人材採用を一手に任されたが、そうした会社の期待に応えたい思いと、どうやって自分の思いを企画に落とし込めばよいのかがわからず、行き詰まりを感じていた。「メンタリングを受けたことで胸のつかえが取れた」と話す。その後彼女は、インターンシップの募集から採用説明会までのすべてを企画・提案するなど、自信をもって業務を遂行している。

社長とふだんから想いや価値観を共有できている社員たちは、判断軸にぶれがなく、前向きでリカバリーが早い。壁にぶつかっても試行錯誤しながら乗り越えていく組織のしなやかさがある。

ベンチャー企業の経営ステージは速いスピードでどんどん変化していく。そして、ステージに応じて会社の目標も刻々と変化していくものだ。社員たちがその変化のスピードに適応していくための土壌作りは欠かせない。

画像提供=ユニフォームネクスト
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「育てがいのありそうなユニークな人」を採用してきた

横井社長はこうふり返る。

「中小企業やベンチャー企業には優秀な人材が集まりにくいと言われている地方で、上場前はそれほど名の知られていなかった当社のようなベンチャーが、会社の成長に合わせて人材を確保していくことは並大抵ではなかった。年間10人ペースで人を増やしていく中で、内定辞退者が出たり、本当に欲しい人材を獲得できなかったり、何度も悔しい思いをした。とにかく早く会社を成長させることに必死で、ダイバーシティマネジメントとか、そういった人材戦略みたいなものを意識する余裕などない。変わっている人を、『面白い!』と思って採用してきただけ」

「即戦力として活躍しそうな雰囲気を出す人というよりもむしろ、育てがいのありそうなユニークな人を採用していこうとは意識してきた。社員が数名しかいなかった昔はもっと人の採用に苦労していたので、『中小企業に最初から優秀な人材が入ってくるわけがない。人材は育てるものだ』という考え方が染みついているのだと思う。だからこそ会社の成長と同じくらい社員の成長に重きを置いている。社員に育ってもらいたいと強く願い、自分の想いや考えを発信し続け、お節介なくらい社員と関わり続けてきたことで、結果的に社員一人ひとりの個性を活かした多様性のある会社に育った」