かく言う私自身も、最初は丸暗記の勉強をしていました。でもそれが多少なりとも通用したのはロースクールに入学するまで。ロースクールには上位の成績で入ったはずなのに、講義で教授に指名されると答えられないし、内容についていけない。周囲の若い学生に後れをとっていると焦りました。自分には、腰痛や緑内障の持病もある……。涙ながらに、何度も福岡に帰ろうかと本気で思いました。

学生たちとの情報共有、議論が鍵

ある日、若い学生たちについていけない理由はなんだろうと、実際にある女子学生に話してみた。すると、みんな講義の情報や課題について、SNSで情報共有していたんです。そこで、そういう効率的な勉強ができる環境に飛び込んでいかなければいけないと気づきました。60過ぎてスマホを初めて手にし、ツイッターやラインを始めて、若者と同じ目線で情報交換に勤しみました。

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そして、学生同士でグループをつくり、講義の復習、各人が作った答案の回し読み批評会などを毎日のようにやっていました。議論をすることが何よりもの勉強法でした。まさにアウトプットの訓練です。

40歳も若い学生たちと仲良くなる秘訣はなにかと聞かれることがあります。一番大切なことは、同級生と同じ23歳の目線になることです。授業でも発言できるように予習を頑張り、授業で手を挙げて積極的に意見をいう、休み時間に隣の学生と議論をする、そうした態度で真剣に取り組んでいると、いつしか「変な爺さん」が「この爺さん結構やるじゃん。勉強会に誘おうか」に変わっていくのです。

これから資格試験を目指す方にお伝えしたいことは、スタートとゴールを取り違えないことです。資格をとることがゴールつまり目標ではなく、資格をとってどうするかが目標のはずです。私は、同期の弁護士の3倍勉強することを目標にしています。何せ人生残された勉強の時間が若い人ほど多くありません。土日も連休も休まず仕事か勉強をしています。交通事故、刑事、離婚、相続……勉強することは山のようにあります。寿命との勝負ですが、いつか「人の心に寄り添ってくれるいい町弁」といわれるように頑張りたいと思っています。

(構成=伊藤達也 撮影=藤原武史)
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