韓国でもベストセラーになった『青春訟歌』
そんな中、私が挙げたい作品は1987年に出版され韓国でもベストセラーになった『青春訟歌』(ナム・デヒョン著)です。若者の「愛情倫理関係」をテーマにした最初の作品であり、北朝鮮の恋愛小説の代表作です。
製鉄所で働く主人公ジノは国産燃料の開発を目指し研究していますが、保守的な現場の風当たりが強く、そのせいで恋人と別れさせられてしまいます。
そしてジノのライバルとして同僚のキチョルと、彼に恋するジョンアが登場します。しかしジョンアはジノのプランのほうが国益に適っていると判断し、キチョルを愛しつつもジノ側につきます。そして職場のミーティングで、公然とキチョルを批判します。彼女は、後にそれを「愛しているからこそ、より無慈悲でなければならない」と説明します。
そしてジノと恋人の復縁をサポートし、愛についての教訓を与えます。「(愛は)果樹園の実や花と同じようにただ摘むのではなく、育てなければならない」。完璧な人を愛するのではなく、相手の欠点まで含めて愛する過程で補い合うべきであると説くのです。
もちろん、西洋人である私には理解に苦しむ作品も多くあります。しかし、だからこそ読む価値があるのです。朝鮮半島の政治的問題を解決し平和を創造するには、文化と生活感情を知る必要があります。そのためにも、北朝鮮の小説を読むべきだと思います。