新聞が語らない地獄がスタートする
2019年の10月の消費税引き上げが既定路線となった。政府は2008年の「リーマンショック級」の経済危機が起きた場合に再延期する可能性はあるとしているが、現状では消費税が10%に引き上げられることはほぼ確実だ。
消費税は、日常生活には欠かせない衣・食・住の商品やサービスの多くに課税されるので、家計が受ける影響が大きくなる。さらに所得の高い低いは関係なく、すべての消費者が等しく負担する税制度である。一見平等に感じられるが、消費税は「逆進性」があると指摘されることが多い。逆進性とは、可処分所得に占める消費支出の割合が高所得者層ほど低く、低所得者層ほど高いため、税負担率が低所得者層のほうが大きくなることだ。消費増税は消費意欲そのものも減退させることが懸念される。14年の消費増税のときは、高額品である住宅や車、耐久消費財が落ち込み、景気が悪くなっていった。
14年の8%への増税後、総務省が発表している「実質家計消費」は現在に至っても増税前の水準に回復していない。政府の想定以上に、増税前の駆け込み需要の反動減と物価上昇に伴う家計の実質所得の減少が見られたのだ。
そんななか政府は、2%の引き上げで約5兆6000億円の税収増を見込み、増えた税収分を幼稚園や保育園の無償化の財源にするほか、国の借金の返済に充てる考えだ。また、消費者の痛税感を和らげる目的で、食料品などの税率は8%に据え置く軽減税率の導入などを行うことを明らかにしている。
ただこの軽減税率は、酒類・外食を除く飲食料品が適用対象となっており、外食は10%だがテークアウト(持ち帰り)は8%のまま。飲食店の場合、イートインとテークアウトで支払う額が異なるため、その確認をこれまで以上に念入りに行う必要が発生する。外食業界も導入は反対の姿勢を示している。
元経済財政政策担当大臣で経済学者の竹中平蔵氏は以前、プレジデント誌の取材にこう答えている。「国会では、どこまでが食品、どこまでが外食かというような、神学論争みたいなことをやっていましたが、本当に軽減税率を議論するなら、住宅や車など高額商品にこそ適用すべきです」。
軽減税率の対象となるのは、酒類・外食を除く飲食料品以外にもう1つある。新聞だ。財務省のホームページには対象は「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」となっている。新聞協会は「ニュースや知識を得るための負担を減らすことは、活字文化の維持、普及にとって不可欠」とホームページに記載している。雑誌やNHKの受信料は軽減税率の対象外なのを考えると論拠が弱い。