社長のかばん持ちを1日させる目的

好きでもないのに必死に勉強したのは、どうしてか。それは、勉強の目的が稼ぐことだからです。

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ニューヨークで「いいメール」を見た後は、これは売れると判断して、NTTに問い合わせて第二種通信業者になりました。1993年、慶應義塾大学の村井純先生が開いた日本初のインターネットセミナーに参加したときもそうです。90分のセミナーのうちネットにつながったのは5分だけで、「いまつながっています」と言われても、正直よくわからなかった。ただ、時代を変えそうな雰囲気があったので、翌年、ドメインを取得してネットワーク事業を始めました。まさに稼ぐために勉強していたのです。

いま教養ブームで、歴史や哲学の解説書が売れているそうです。でも、私は教養にまったく興味がありません。教養があれば「自分はいろんなことを知っている。だから馬鹿にされない」と安心できるかもしれませんが、経営者であれば、安心を買うより、会社の利益になることに投資をすべきです。

一般のビジネスパーソンも同じです。資格をたくさん取って満足している人は、もう勉強すること自体が目的になっています。そんな勉強をいくら重ねても、自分の稼ぎは増えないし、お客様の役にも立たない。勉強するなら、まず目的を明確にして、それにつながる勉強だけに絞り込むこと。能力が低くても、そうやって勉強すれば成果が出ます。

稼ぎにつながるという点でスキル以上に勉強したいのは、世の中の動き。世の中が変わればお客様のニーズや市場環境も変わる。その動きを理解しないと戦略を立てられません。

ただ、私はニュースを見ないし新聞も読まない。処理能力が追いつかないから、端から捨てています。ニュースを見た妻が食事のときに話してくれる内容で十分です。

私が重視しているのは、現場に近いところの動きです。わが社は内定者に1日、社長のかばん持ちをさせます。目的はいろいろありますが、その1つはリサーチです。かばん持ち中、内定者に私への質問をさせるのですが、その内容で内定者の傾向をつかみます。

具体的に言うと、2016年入社組から、仲間から抜け出すことを嫌がるようになりました。たとえば内定者それぞれに書店の実地調査をしてもらうと、一人ひとり帰ってくるのではなく、何人かで待ち合わせて一緒に帰ってきます。

こうした傾向について「最近の若いやつは」と嘆いても仕方がありません。稼ぎたければ、むしろ傾向に合わせて会社の仕組みを変えるべきです。実際、セールス部門の業務を個人戦から3人一組のチーム戦に変えたら、いい成績をあげるようになりました。

若者の気質が変化していることは、本でも学べるかもしれません。ただ、実際に自分の目で見ないと実感できないし、変化に対する具体的なアクションも起こしにくい。机上の空論ではなく、生の情報を取って活かしてこそ、本当の意味での勉強ではないでしょうか。

▼「やらない」と決めた勉強
・代理がきく・「馬鹿にされない」「安心」だけがメリット・稼ぎが増えない
英語の勉強
歴史・哲学などの「教養」
ニュース・新聞の視聴・購読
資格試験の勉強
▼必死でやった勉強
・稼ぎに直結
ITの勉強
世の中の「現場に近いところ」の動き
(構成=村上敬 撮影=的野弘路)
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