全国で唯一私立高の甲子園出場がない県

【徳島】出場校32校

私立優勢の時代になって久しい高校球界。しかし、徳島はそんな流れとは無縁の県です。全国で唯一、私立校の甲子園出場がない県なのです。そもそも野球部のある私立校が1校のみなので、そんな記録が生まれやすい背景はあります。しかし、その唯一の私立である生光学園は、いつ甲子園に出てもおかしくない強豪なのです。私のランキングでは全国No.1の「悲願校」です。初参加となった1981年の夏の徳島大会でいきなりのベスト8。85年にはベスト4入りを果たし、以後上位の上位常連になりました。

95年夏、ついに決勝進出し、プロで活躍する武田久(元・日本ハム)が2年生エースとして奮闘しましたが、鳴門に大敗。新チームで臨んだ秋には優勝し、四国大会に進出するものの、岩村明憲(元・ヤクルトほか)が主砲を打つ宇和島東に敗れ、センバツには手が届きませんでした。

以降、夏はベスト4が10回、春も3度優勝、秋春ともに県内ベスト8、ベスト4に入ったことは数多くありました。なのに、勝ちきれない。公立校が「生光にだけは負けられない」と意地をむき出しにしてくるなか、気迫に押されるのではないかという見方もあります。しかし、「“徳島初の私学の甲子園出場”を達成できるのは自分たちだけ。歴史をつくれるぞ」と悲願校脱出をかけた戦いは続きます。

甲子園出場校だけが強豪というわけではないことが、おわかりいただけたでしょうか。全国に散らばる「悲願校」の勝ち上がりに注目して、各地で繰り広げられている予選の結果に目を凝らしてみるのも、高校野球を楽しむもう一つの見方なのです。

田澤 健一郎(たざわ・けんいちろう)
編集者・ライター
1975年生まれ。山形県出身。高校時代は山形の強豪校、鶴商学園(当時・現在の鶴岡南)で、ブルペン捕手と三塁コーチャーを務める。大学卒業後、出版社勤務を経てフリーランスの編集者・ライターに。野球などのスポーツ、住宅、歴史などのジャンルを中心に活躍中。マニアックな切り口の企画を得意としている。共著に『永遠の一球~甲子園優勝投手のその後』(河出書房新社)など。
(写真=iStock.com)
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