プロ野球の「セ・パ交流戦」が終了した。各リーグで昨年最下位だった阪神と楽天は、それぞれ3位と2位と、前半戦をいい位置で折り返した。スポーツライターの相沢光一氏は「その理由は、監督が選手の活躍にガッツポーズをするなど熱量が高いことにあるのではないか」と指摘する――。
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楽天・平石、阪神・矢野の両監督の手腕が光った

プロ野球の「セ・パ交流戦」が終わり、レギュラーシーズンの前半戦が区切りを迎えた。ここまでの戦いぶりから、各チーム監督の「通信簿」をつけてみたい。

昨年と比べ、チーム状態を確実に上向かせたという点で高く評価したい監督が、両リーグにひとりずついる。パ・リーグは東北楽天の平石洋介監督、セ・リーグは阪神の矢野燿大(あきひろ)監督だ。

平石監督は昨年6月、成績不振の責任をとって辞任した梨田昌孝監督の後を引き継ぎ監督代行としてチームを指揮するようになった。昨シーズンはその後、チームは見違えるような快進撃を見せ、ファンに浮上の期待感を抱かせたが終盤は失速。レギュラーシーズンが終わってみればリーグ優勝した西武に29.5ゲーム差をつけられた最下位だった。

正式に監督に就任して迎えた今季も前途多難なスタートとなる。

則本昴大(たかひろ)投手が右ヒジの故障で手術を受け前半戦の出場は絶望、開幕投手を務めた岸孝之投手も左太もも裏の違和感で登録抹消と、投の2枚看板不在でシーズンを始めることになってしまった。野手では西武から浅村栄斗(ひでと)内野手がFAで加入したが、それ以外は昨年の最下位メンバーと大きな変化はない。イーグルスファンは「今年も上位争いは難しそうだ」と思ったはずだ。

ところが楽天は、そんな声をはね返すように開幕から勝利を重ねていく。

投手では美馬学、辛島航、塩見貴洋、広島からトレードで加入した福井優也、抑えの松井裕樹、昨年まで1軍実績はほとんどなく育成契約になったこともある石橋良太らが、則本、岸の穴を埋めて余りある活躍を見せ、打者では浅村はもとより銀次、茂木栄五郎、島内宏明、藤田一也、ウィーラー、ブラッシュらが、それぞれの役割を十分果たしている。6月30日時点で、ソフトバンクと2ゲーム差の2位にいるのだ。

共通点は「ベンチでの感情表現が豊かで選手との距離が近い」

一方、昨年セ・リーグ最下位だったものの今シーズン前半奮起したのが阪神だった。金本知憲監督の後任として指揮を執ることになった矢野監督は今季、散々なスタートを切った。ヤクルトとの開幕カードは2勝1敗と勝ち越したものの、次の巨人戦は3連敗。その後も黒星が先行し、2度目の巨人戦(甲子園)でも3タテを食らった。対巨人6連敗で、その内容も3試合が大差負け、2試合が完封負けと実力差を見せつけられるものだった。阪神ファンは宿敵巨人に負けるのが最も腹立たしいといわれる。そのため開幕直後の4月には早くも矢野監督解任論が飛び交った。

しかし、矢野監督は動揺することなくチームを建て直していく。5月には白星を積み重ねるようになり、巨人戦も4戦4勝と意地を見せた。そして現在(6月30日現在)は貯金もでき、順位も巨人、広島に次いでDeNAと同率の3位。昨年の成績と開幕直後の低迷から見れば大躍進だ。

平石監督と矢野監督には共通項がある。

ベンチでの感情表現が豊かなことと選手との距離が近いことだ。