実績のなかった選手を1軍で通用するレベルに引き上げた
矢野・平石両監督は新人や実績のなかった選手を1軍で通用するレベルに引き上げた点でも評価できる。
矢野監督は開幕スタメンにふたりの新人を起用する大胆な策をとった。1番ショートにドラフト3位の木浪聖也(25)、2番センターにドラフト1位の近本光司(24)と新人に1・2番を任せたのだ。ともにオープン戦で好成績を残したからで、特に木浪は打率3割7分3厘と絶好調だった。
だが、阪神のショートといえば鳥谷敬。過去15年間、開幕スタメンを続けてきた実力者で、その鳥谷を外すのは大きな決断だったはずだ。この大抜てきに木浪は当初、応えられなかった。開幕から2週間余りヒットが打てなかったのだ(17打数で0安打)。このまま不調が続けば木浪は自信を失うことも考えられるし鳥谷にも不満が生じる。チームに不協和音が生まれかねない状況だ。が、矢野監督は木浪を時にはスタメンから外すこともあったが、辛抱強く起用し続けた。鳥谷も大事なところで代打起用するなど信頼感を示した。その辛抱もあって木浪は現在、打率2割5分4厘、2本塁打と新人内野手としては十分な成績を収めている。また、近本も開幕当初は成績不振だったが、現在は打率2割6分8厘、6本塁打でレギュラーの座をしっかりつかんでいる。
野村克也氏「ガッツポーズする監督は失格」は間違い
平石監督もドラフト1位ルーキー・辰巳涼介を開幕直後からプレッシャーのかからない下位の打順で起用。試合に慣れさせ、レギュラーとして定着するところまで育てた。
こうした新人の起用を成功させているのは、選手の実力を見極める目、信頼して使い続ける信念、他の選手に起用を納得させる対話があるからだろう。
あらわにする熱さや選手との距離の近さを含め、平石監督と矢野監督は選手の心をつかみ、やる気を引き出すモチベータータイプの指揮官といえる。下位に沈んでいたチームを変革するには、こうしたモチベータータイプの指導者が必要なのだ。そして実際、チームは活性化し上位争いをしている点で、両監督には10点満点の通信簿なら8点をつけてもいいのではないだろうか。
監督として偉大な実績を積んできた野村克也氏からは「ヒットでガッツポーズをしているようでは監督失格」といわれているが、阪神も楽天もチームは好循環の波に乗っているし球場も盛り上がっているのだから、このスタイルは押し通してもらいたい。