「曽祖父から4代にわたって培った『ほかの人より一歩先んじてやってみる』という創業の精神を前面に出そうと思ったんです。決して大きくはない事業規模だからこそできること、うちじゃないとできないこととは何なのか。強みを活かす戦略を考えたんです」

そこでたどり着いたのが、小ロットでの商品開発でした。その結果、現在では、1年間で開発される新商品の数は全国の飲料メーカートップの150にものぼるようになっているのです。

拠り所としているミッションは、7年前に新造した社屋の2階エントランスに会社の120年の歴史資料とともに掲げられています。会社の規模が大きくなり社員も増えるなかでも、この創業の精神を浸透させようと、社員の勉強会や合宿研修を定期的に行い、社内報を冊子にして制作するなど理解を深める活動も継続して行っています。

企業も商品も変化にさらされ、目的を見失いそうになるなかで、会社のミッションを再定義し、浸透させることで自社の強みを伸ばしていく経営が行われているのです。

友枡飲料が次々と商品開発をできる背景としてもう1つあげられるのが、実際に作ってみる「プロトタイピング」のマインドセットがあります。

ヒット商品を生み出す「プロトタイピング」マインドセット

デザイン思考が生まれた米スタンフォード大学では、機械工学科の教員が試作品を見ながら、設計や営業などの多くの人が一緒に議論することで、よりよいものを作るという手法が体系化されています。この試作品、新商品を次々と作り、よりよいものを作るというプロセスが友枡飲料では行われているのです。実際、市場に次々と商品を発表し、小さなヒットから次の新たなプロトタイプ商品につなげ、さらに次の商品がヒットするといういい連鎖を生んでいます。その典型的な商品が「こどもびいる」でした。

03年のこと、博多のもんじゃ焼き店から、「こどもびいる」のアイデアが書かれた1通のメールが、友桝飲料に送られてきたそうです。

「ネーミングを見た瞬間から、クリスマスのシャンメリーのようにハレの日に、子どもたちがおじいさんやおばあさん、家族で楽しんで飲むイメージがはっきりと浮かんだんです。イケると直感しました」

友田社長はこれをすぐに商品化。ノンアルコールビールが一般的になる前だった04年、100万本以上を売り上げる大ヒットとなりました。