ゲーム・スマホは「有害」ではない

次に、よく質問されるゲーム・スマホ依存についてです。

まず、ゲーム、スマホというと目の敵にするお父さんお母さんが多いのですが、日常生活に支障をきたさない範囲できちんと付き合えば、特に有害ではありません。私自身はゲームを全くしないので実感はありませんが、若いスタッフや学生インターンが、ひきこもりの生徒との信頼関係を構築するまでの過程においては、ゲームはコミュニケーションツールとして大きな役割を担っています。

ひきこもりの生徒が登校してくるようになると、休み時間に一緒にゲームをしてコミュニケーションを深めていきます。特に最近はチームプレーをするゲームが多くなってきているので、一緒にプレーすることで友情を深められます。ですから、ゲームの全てを否定するよりは、より有効に活用するほうに考え方を変えることをお勧めしています。

また、最近はゲーム自体が「eスポーツ」というスポーツの一種として肯定的に捉えられるようになってきています。全国大会や世界大会などもあり、2022年のアジア競技大会では正式種目になることが決まっています。2024年のパリオリンピックでも正式種目化が検討されているところです。

2018年度には毎日新聞社主催の「第1回全国高校eスポーツ選手権」が開催されています。当会でもこれをきっかけに部活としてeスポーツ部が発足し、この大会の出場に向けて、みんなで活動しました。2019年度も参加する予定で、活動を続けています。

「プロゲーマーになりたい」ならとことんやるのも手

杉浦孝宣『不登校・ひきこもりの9割は治せる 1万人を立ち直らせてきた3つのステップ』(光文社新書)

うちに来る生徒でも、「ゲームが好きだから将来プロゲーマーになりたい」という生徒がときどきいます。こういった生徒にはとことんやらせてみるのも手かもしれません。だいたいの生徒は、スタッフの竹村と対戦してボロボロに負けます。

そうすると、プロゲーマーの道はどれだけ難しいのか自分で納得します。そして、「プロゲーマーになるくらいなら、大学に進学したほうがよっぽど楽だ」などと言いだします。上には上がいることを実感したら、自分なりにまた別の道を探し始めます。

ただ、ゲームをやりすぎて昼夜逆転するなど、生活に支障をきたしているのなら、それは制限しないといけません。

私たちは生徒と話し合って、お互いが納得したうえで、かつ実行可能な約束をすることで、ゲーム依存になることを防いでいます。同時に、その子が将来どうしたいのか、一緒に考えていくことが大事です。ゲーム以上に自分が本当にやりたいことを見つけると、自然とやりすぎないようになっていきます。

杉浦 孝宣(すぎうら・たかのぶ)
NPO法人高卒支援会代表
1960年生まれ。カリフォルニア州立大学ロングビーチ校卒。小学校3年生のときに保健室登校を経験するが、養護学園に半年通い不登校を克服した。大学卒業後に家庭教師を経験、1985年に中卒浪人のための学習塾・学力会を設立。以来30年以上、不登校、高校中退、ひきこもりの支援活動を行っている。2010年よりNPO高卒支援会を立ち上げ、現在も活動中。著書に『高校中退 不登校でも引きこもりでもやり直せる!』(宝島社新書)などがある。
(写真=iStock.com)
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