「高度な言い訳」で自分を守る

どちらにしても、不登校・ひきこもりの生徒は、何かしら病気の診断をされていることが少なくないのですが、それは薬で治すのではなく、環境を変えて、自分の本当にやりたいことを見つけることで治っていきます。やりたいことを見つけると、その道を進むために自分で学校に行くなり働くなりして、元気になります。

また、不登校やひきこもりの子には防衛機制を起こすケースが多いのではないかと感じています。防衛機制とはフロイト心理学の用語で、外界の環境や心身の変化に対応して湧き起こる無意識レベルの不安や恐怖、欲望、衝動から自分自身を守るために、無意識的にもたらされる防御反応のことです。難しそうに聞こえますが、つまりは「高度な言い訳」です。

高校2年生で不登校になり、定時制高校に編入して高校卒業を目指しているコウタくんは、内緒でボランティアに行ったことで、スタッフの竹村にひどく叱られました。コウタくんは10月に大学の推薦入試を控えていたのに、8月という直前期にボランティアに行ったから怒られたのです。

ボランティア自体はいいことで、本人は「自分が本当に医師になるべきかどうか確認に行った」と言いますが、本心では、迫りつつある入試に向けて勉強しなくてはならないのに、いっこうに数学の偏差値が上がらず、勉強から逃げ出したい気持ちがあったのです。そこで勉強から逃げ出す口実としてボランティアに行ったのです。

原因は「自我をコントロールできない」こと

コウタくんに悪気はありませんが、これは誰かがコウタくんに言わなくてはならないことですし、コウタくんに立派になってもらいたいからこそ、言う必要があります。そこで竹村が説教をしたのです。

コウタくんは「その時は本当に自分が医者になるべきか確認するためだと自分に言いきかせていたけど、本当は数学がずっと得意だったはずなのに、入試直前になっても数学ができなくて、勉強したくなくなった」と泣き出しました。

このように、不登校・ひきこもりの子は、自我をコントロールできないために、無意識に合理化した一見正しいように聞こえることを言うこともあります。高度な言い訳です。それを親が否定すると、反発して、親子関係が悪くなってしまいます。こういったときにも本人が信頼している第三者が指摘するべきでしょう。