プラスチック製おもちゃをトレーにリサイクル

昨年の2月から5月にかけては、不要なプラスチック製の「ハッピーセット」のおもちゃを回収してトレーに変えるリサイクルに初めてチャレンジした。店内に回収箱を設け、100万個を目標としたところ、それを大きく上回る127万個が集まった。リサイクルしたおもちゃは10万ユニットの緑のトレーに姿を変え、通常の黒色のトレーに混じって、店舗で使われている。今年も3~5月に同様の試みを行い、昨年と同程度の数が回収された。

おもちゃがトレーに生まれ変わってお店で役に立っている様子を見るのは、子供にとって意義のある体験だろう。このような、一見売上とは関係ない環境への意識を啓発する活動も、顧客のマクドナルドへの来店機会の増加に寄与している。

この他にも、子ども向けの職業体験プログラム「マックアドベンチャー」や、店内にジャングルジムや滑り台などを設置した「プレイランド」など、ファミリー層への訴求を狙った取り組みは数多い。「マックアドベンチャー」は30年以上続く名物企画だが、昨年からウェブでの予約を可能にしたことで、飛躍的に参加者数が伸びているという。

マクドナルド白山通り店(熊本県熊本市)に設置されたプレイランド

親子向け企画の強化は業績回復にも貢献

日本マクドナルドホールディングスの年商は、2008年の4064億円をピークに下降線をたどり、中国の提携工場での使用期限切れ鶏肉提供疑惑、異物の混入問題などで、14年には半分近い2223億円にまで落ち込んだ。経常利益も、不採算店整理の効果が出た11年の276億円をピークに、14年には80億円の赤字に転落。15年にはさらに悪化して、売上高1894億円、経常損失259億円を計上し、会社存亡の危機とまで言われた。

だが、この年を底に継続的な回復を続けており、18年12月期決算では、売上高2723億円、経常利益256億円まで戻している。その背景には、このように「ハッピーセット」をはじめとした、親子で楽しめる企画の強化も寄与していると考えられそうだ。

残念なのは、17年8~9月に発売した期間限定商品「東京ローストビーフバーガー」が、一部成型肉を使用しているにもかかわらず、ブロック肉をスライスしたかのように表示した宣伝が、景品表示法の優良誤認にあたるとして、消費者庁より再発防止の措置命令が出されたことだ。今年5月24日には課徴金2171万円の納付を命じられている。業績回復したといえど、再び食の安全性を疑われるようなことが起きれば、顧客離れにつながる負のサイクルに陥るリスクが高まる。

せっかく築き上げた、親子で楽しめるファミリー・ハンバーガー店としてのイメージを守るためにも、顧客からの信頼を棄損する行為を、二度と起こさないでもらいたいものだ。慢心することなく真摯に取り組んで、常に親子を喜ばせてくれる存在になることを期待する。

長浜 淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
ジャーナリスト
兵庫県西宮市出身。同志社大学法学部法律学科卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て角川春樹事務所編集者より、1997年にフリーとなる。ビジネス、飲食、流通など多くの分野で、執筆、編集を行っている。共著に『図解 新しいビジネスモデルの教科書』(洋泉社)、『図解 ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)、『バカ売れ法則大全』(SBクリエイティブ、行列研究所名義)など。
(写真提供=日本マクドナルド)
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