早く立ち直れるかは心の「回復力」次第

そのまま成長しなくていい、今のままでいいというのではない。そのままでいい、変わる必要ないというなら、いつまでたっても傷つきやすい心を抱えて、事あるごとに酷く落ち込み、いったん落ち込むとなかなか立ち直れず、そんな自分に自己嫌悪して、うつうつとした人生をずっと送り続けなければならない。

それでいいのだろうか。そんな人生を望むだろうか。できることなら、ちょっとしたことでいちいち傷ついたり落ち込んだりしないですむように、もっと前向きに生きられる強い心を手に入れたいと思わないだろうか。

そもそも「そのままの自分でいい」「無理しなくていい」という心のケアの決まり文句は、心が酷く傷ついて病理水準にあるときに、こんな状態で頑張れというのは酷だということで、現実生活から緊急避難させて一時的に保護するためのものだ。それを日常場面に当てはめる風潮が広まったせいで、日頃から努力することも頑張ることもせず、自己コントロール力を高めることもせず、弱く未熟で傷つきやすい自分をそのままに生きている人が目立つようになった。

落ち込んでばかりいても、状況の改善は望めない

心が鍛えられていないため、ちょっとしたことにも酷く傷つく。何かにつけて自信がない。自信がなく不安が強いため、他人の何気ない言葉や態度を必要以上に気にする。嫌なことがあるたびに大きく落ち込み、前に進めなくなる。前向きに頑張ることができないため、パッとしない人生になる。その結果、不満や愚痴だらけになり、自分に嫌気がさしてくる。

心が鍛えられていないためにレジリエンスが低いのだ。

レジリエンスとは、復元力と訳され、もともとは物理学用語で弾力を意味するが、心理学では回復力とか立ち直る力を意味する。もう少し具体的に説明すると、レジリエンスとは、強いストレス状況下に置かれても健康状態を維持できる性質、ストレスの影響を緩和できる性質、一時的にネガティブ・ライフイベントの影響を受けてもすぐに回復し立ち直れる性質のことである。

要するに、嫌なことがあったときはだれでも落ち込むが、そこからすぐに立ち直れるか、長く尾を引くかは、レジリエンスしだいというわけだ。どうしたら打開できるかわからないような困難な状況に置かれれば、だれだって心に負荷がかかり、落ち込んだり、悩んだり、絶望的な気持ちになったりする。

でも、そこで諦めて投げやりになったり、落ち込んでばかりいても、状況の改善は望めない。ますます自分が追い込まれ、悲惨な気持ちになるだけだ。