とはいえ、上場企業がICOを利用して資金調達するにはハードルもありそうだ。
そもそも上場企業は、株式市場で投資家から資金調達をしている。
「仮に会社が破たんした場合、残った資産は株主に分配されますが、トークン保有者の権利をどうするかはクリアになっていません」
東京証券取引所を傘下に持つ日本取引所グループも慎重な姿勢を見せている。最高経営責任者(CEO)の清田瞭氏は18年3月30日時点の記者会見で「東証の上場会社がICOを行うことについては、慎重であるべき」とけん制している。
一方、ICOは企業に限らず、個人でもNPO法人でも資金調達に利用できるという魅力もある。
「その活動に共感する人が国境を超えて投資をして、事業を応援できるようになるかもしれません」
ただし、事業がうまくいかなければトークンの価値がゼロになることもある。寄付のつもりならいいが、投資と考えるのであれば、事業の将来性などについて、十分に検討する必要がある。
▼キャッシュレス
給与振り込みにもプリペイド化の波
日本でキャッシュレス化が広がっている。きっかけはPayPayやLINEPayなど決済会社のキャンペーンだ。PayPayは、2度にわたり利用額の最大20%を還元するキャンペーンを実施した。LINEPayも同様の還元を実施している。
たとえばPayPayは18年12月4日から「100億円あげちゃうキャンペーン」を実施した。調査会社のヴァリューズによると、実施前の12月3日時点では、アプリの起動ユーザー数が約104万人だったが、12月4日には約203万人に増加した。その後、100億円の上限に達したためキャンペーンは終了したが、最終日の12月13日には約471万人まで達している。
キャッシュレス化の浸透により、今後は給与の受け取りも変化しそうだ。現在、給与の支払いは労働基準法第24条によって「①通貨で、②直接労働者に、③全額を、④毎月1回以上、⑤一定の期日を定めて支払わなければならない」と規定されている。これを「賃金支払いの五原則」と呼ぶ。
「給与は現金払いが原則ですが、労働基準法施行規則7条の2によって例外が認められ、銀行などの金融機関や証券会社の口座への振り込みは可能になっています。これを一歩進めて、ペイロールカードへの入金を可能にする規定の新設を厚生労働省が検討しています」