向いていないものは捨てる勇気を持とう

好きなことを、ライフワークの趣味で楽しむか、仕事にできるかは、その業界の市場特性が一番影響を持ちます。

また、注意するべきは「できること」です。20代でやってみたらすぐできたことであれば資質があるとみていいでしょう。問題ありません。

危ないのは中高年です。資質がないことをできるようにするには「労力×期間×ストレス」がかかります。長期間かけ、めちゃくちゃ苦労した上で、「ちょっとだけ」成長し、「できるようになる」のです。資質がある人の数倍から数十倍は苦労するのです。

対人関係の資質が弱く、苦節20年、45歳で5名のチーム運営ができた「石川さん」がいたとしましょう。周りからみると、マネジメントの伸びしろは薄く、本来の持ち味を活かした方がいいように思うでしょう。

ところが石川さん本人は、「マネジメント」が苦労してできるようになってきたので、逆に怖くて手放せなくなる心理が働きます。

苦労した自分の時間と労力を無駄だったとは思いたくないからです。これは、リストラされる人にみられる傾向でした。

勇気を出しましょう。資質にあっていないものは捨て、資質にあっているものを上手に拾うべきです。

キーになるのは、情報として知りえた「やってみたい」ことの中から、資質に沿った、向いているものをやってみることです。

機械工学の専門だったが資質は違った

具体的な例をだしましょう。私、松本利明の大学時代の専門は工学部の機械工学科でした。

なぜ、私が外資系コンサルタントを目指したのか。大学4年生の時に「外資系コンサルタント」という情報を知ったからです。

松本利明『「いつでも転職できる」を武器にする』(KADOKAWA)

歯車の機械製図を夜中に書いている時、ある1つの番組が目に飛び込んできました。「金曜プレステージ 東京ソフトウォーズ」(テレビ朝日)という、素人参加型の企画のコンペ番組です。

機械製図より面白そうとのめり込みました。その時の審査員にいた、元マッキンゼーの経営コンサルタントの波頭(はとう)亮さんの存在を通して外資系コンサルタントを知ったのです。

そして、やってみました。審査員の方々にお願いして実際のビジネスレベルで教え、鍛えていただく勉強会を企画し、毎月実施してもらいました。今でいうインターン的にアルバイトをさせてもらうようなものです。

鍛えてもらったスキルをもとに、番組のお題の企画にチャレンジし、生放送でプレゼンしてダメだしやアドバイスをもらうことが、たまらなく刺激的ですぐにどんどんできるようになりました。専門性に関係なく資質がベストマッチだったのでしょう。

人事戦略コンサルタントの目から自分をみると、もし、専門性をベースにメーカーに就職していたら、自分の資質ならよくても大企業の子会社の課長止まりは確実でした。

専門性、経験、欲望が目を濁らせるので、自分の素である資質をもとに、向いていることを仕事にしましょう。

松本 利明(まつもと・としあき)
人事・戦略コンサルタント、HRストラテジー代表
日本人材マネジメント協会執行役員。外資系大手コンサルティング会社であるPwC、マーサー、アクセンチュアなどのプリンシパル(部長級)を経て現職。国内外の大企業から中堅企業まで600社以上の働き方と人事の改革に従事。『「稼げる男」と「稼げない男」の習慣』(明日香出版社)、『「ラクして速い」が一番すごい』(ダイヤモンド社)など著書多数。
(写真=iStock.com)
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