転職について、「好きなことを仕事に」などと喧伝されている。しかし、人事・戦略コンサルタントの松本利明氏は「好きなことは稼ぐ手段の一つでしかない。向いていなければキャリアを無駄にすることになる」と指摘する――。

※本稿は、松本利明『「いつでも転職できる」を武器にする』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

「あなたのやりたいことは」に何と答える?

いきなりですが、問題です。

あなたが人生をかけて本当に「やりたいこと(=好きなこと)」は何でしょう?

頭の中で結構ですので、考えてみてください。自分に嘘はつけません。綺麗ごとでなくていいですし、他人には見られませんので、本音でどうぞ!

実際、「これをやりたいのです!」と即答できる人も実はごく少数です。年齢は関係ありません。40歳を超えても、80歳を過ぎても、本当にやりたいことを掴めない人は掴んでいません。

それはなぜか?

「やりたいこと」の正体は、実はテレビやネットなどで見聞きした「情報」が9割だからです。仕入れた情報を通して「頭で考えて」導くのが、「やりたいこと」の正体です。実際、あなたも、「やりたいこと」と聞かれて、頭で「う~ん」と考えたでしょう。

逆に言うと「やりたいこと」は情報として入らないと思いつかないのです。

・かっこいい
・儲かりそう
・周りからみとめられそう
・楽しそう

など、実際に情報を得た時の感情をもとに、「やりたいこと」かどうかを考えるのです。これは、ごく自然なことです。

まだ5歳児だった頃、将来は、「サッカー選手になりたい」「化学者になりたい」「プリキュアになりたい」と思ったことと似ています。

やりたいことが最初から分かっている人はいない

人は情報と感情をセットにして、「やりたい」と思うのです。子供ならピュアです。残念ながら、人は年を重ねれば重ねるほど、大人になればなるほど、経験を積めば積むほど、頭をよぎるものが多くなります。そう、経験から学ぶからです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/courtneyk)

40歳を過ぎてからスポーツの世界大会で金メダルを目指そうとは思わないのが普通です。人は成功と失敗から学び、賢くなればなるほど現実的な解を出すようになります。ゆえに、やりたいことを「頭」で考え続けると、逆に見えなくなるのです。

ホリエモン(堀江貴文さん)は「やりたいことや向いていることを最初からわかっている人はいない。何でもいいから手当たり次第に手を出して、できるだけハマってみよう」と言っています。

確かに、その通りです。やってみなければ、本当にやりたいことはわからないものです。

すぐに「多動力」を発揮できる人ならいいです。ただ、実際はまず頭で考える人の方が多いものです。

大企業、成長企業で活躍している経営者や幹部、その候補の方々でも、希望通りの職場に配属される、やりたいことを持ち、その通りに進んだという人はごく少数です。子供の頃の夢をその通りに大人になってかなえた恵まれた人が少ないのと一緒です。