「目指すなら観光立国ではなく観光大国」

――海外のホテルチェーンの買収をインバウンド需要にも活用しようとする戦略ですね。

現在、プリンスホテルの国内向けの会員サービスに約90万人が参加されています。訪日外国人向けの会員サービスには約3万人、そこにステイウェルの外国人会員約5万人が加わります。こうしたグローバルな会員組織を一体運営していきます。バブル時代のように海外のホテル事業の収益だけではなく、海外のお客さまをプリンスに招き、インバウンド収入の増加も狙っています。

――後藤社長は、日本は観光大国を目指せと主張されています。

撮影=安井孝之

観光立国とか観光先進国という掛け声はあまりに消極的です。目指すなら観光大国です。そのためには表示の多言語化は待ったなしです。昨年、北海道で大地震がありましたが、多くの外国人観光客が放置されました。

災害の多い日本ですから、どんな事態になっても多言語で対応できるようにしなければなりません。海外の観光地でも外国人への対応は必ずしも十分ではありませんが、日本は海外に先んじて言葉のハードルを下げていく努力をもっとしていくべきです。

ITを活用して新しいモビリティサービスを提供するMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)も、海外からの旅行者を念頭に鉄道、バス、タクシーなどが連携し、サービス提供をすべきです。日本の技術力があれば、海外に先んじて先進的な取り組みができるはずです。私は、西武グループが観光大国のトップランナーになれると信じています。

後藤 高志(ごとう・たかし)
西武ホールディングス代表取締役社長
1949年東京生まれ。東京大学を卒業し、72年に第一勧業銀行(DKB)に入る。97年のDKBの総会屋利益供与事件では経営刷新を進めた「四人組」のリーダーだった。DKBと富士銀行、日本興業銀行が統合し、2004年にみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)副頭取に。05年に西武鉄道社長に転じ、西武グループの再建の陣頭指揮を執った。
(聞き手・構成・撮影=安井孝之)
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