同社の研修熱は相当なもので、管理本部に教育課を置き、社長以下、社員全員の研修スケジュールを管理しています。同社の場合、研修は教育指導というより、自己研鑽を支援する意味合いが強く、それが社員の自主・自発的な姿勢につながっているようです。

携帯端末「サットくん」一台で見積もり、施工内訳、請求書発行、集金を完遂できる。

福利厚生面では、週3日のノー残業デーを実施、プレミアムフライデーでは、18年3月から社員の飲食のために1人4000円の支援金を出しています。さらに出産・育児、介護などに関わる休暇制度のほか、誕生日の1日休暇、子供が誕生する日の父親の休暇制度まであります。

「ノー残業デーは『サットくん』導入で、帰社後のデスクワークが大幅に減ったので実現できた」と荒木氏はいうのですが、かつては新入社員の1割も居つかないほど離職率の高い時代があったそうです。社員第一主義を掲げ、職場の環境整備に力を入れてきた背景がそこにあります。

現在、島根電工の社員数は、関連会社も含めて約600名ですが、国内企業の入社3年以内の離職率がほぼ3割に達する(厚生労働省調査)のに対して、同社はわずか4%程度だそうです。

「当社は営業成績を前年度対比で見ない」

「私が入社したのは72年、高度成長のさなかです。ビジネスは弱肉強食の世界、食うか食われるかだと当時は思っていました。しかし今、地方の企業はそれでは立ち行きません」と荒木氏。

島根県は年に5000人弱の規模で人口減少が続く地域。大切なのは競争よりも共生です。「当社は営業実績を前年度対比では見ていない」という荒木氏は、事業の拡大よりも、むしろ“利益がいくらあれば、会社を存続できるのか”という発想に立っています。

12年から本格展開したFCも、その考えに基づいています。端的にいえば小口工事の「住まいのおたすけ隊」事業により、同業者が地域の一番店になれるよう支援するのが島根電工流といえるでしょうか。

FCの仕組みも独特です。加盟料は契約金と教育費で、これらには島根電工が小口受注で運用している「サットくん」を含めた情報システムの一切がパッケージされています。

資材納入や売り上げ・利益に比例したロイヤルティで稼ぐのではなく、社風づくり、人材づくりを重視するのが同社のFC方式。「地方の設備業者を元気にしたい」という荒木氏の思いが窺えます。加盟会社はこの5年間で31都道府県、46社に広がっています。

きめ細かな顧客データ活用で「感動を提供」

実際に訪ねてみると、島根電工はとても風通しのよい会社だとわかります。役職の上下にこだわらず、ものをいえる気風があり、若い社員でも要望があれば社長に直接話します。朝、出勤すれば社長以下全員でオフィスの掃除をしますし、年に1度の運動会には関連会社の社員家族も参加します。