中小企業のような家族的な雰囲気

何か、昭和の時代にはたくさんあった中小企業のような家族的な雰囲気を感じるのですが、小口受注のビジネスに付加価値を生み出している原点は、この気風に負っているところも大きいと思われます。

プレミアムフライデーは1人4000円の支援金が(写真上)。各人が帰宅時間を明示(同中)。顧客も気付かぬニーズに応えることを促すスローガン(同下)。

情報システムの開発にしても、自社の業務の利便性より、顧客にとって有益かどうかが優先されています。たとえば顧客データは、電球1個の取り換えでも、詳細な利用履歴が残されます。

「利用履歴は、即座に引き出せるようになっています。ですから、お客様から電話を受けて『いつ購入されましたか』『品番はわかりますか』などと尋ねて、相手を煩わせたり、不快にさせることはありません」(荒木氏)

電球やコンセントの付け替えから、エアコンや太陽光発電パネルなど数十万の工事に派生する。そのように顧客との関係性を良好に保つことにより、収益性を高めていく。その理念と手法は、地域循環型のビジネスモデルとして注目に値します。

過疎化の進行した地方にも、何がしかの潜在的なニーズがあるはず。「仕事がなければつくるしかない」という荒木氏の考え方が、その掘り起こしにつながったといえるでしょう。

▼地域循環型のポイント:独自の社風・人材づくりで小口のビジネスに付加価値

会社概要【島根電工】
●本社所在地:島根県松江市東本町
●資本金:2億6000万円
●従業員数:595名(単体389名、2018年4月1日現在)
●事業内容:電気設備工事、エンジニアリングサービス、空調設備サービスほか
●設立:1956年(島根電気工事)
●沿革:63年島根電工として組織変更。2011年島根電工ホールディングス設立。グループ総売上高:2017年度167億円、16年度165億円、15年度148億円。
森下 正
明治大学政治経済学部専任教授 経済学科長
1965年、埼玉県生まれ。89年明治大学政治経済学部卒業。94年同大学院政治経済学研究科経済学専攻博士後期課程単位取得・退学。2005年より現職。著書に『空洞化する都市型製造業集積の未来―革新的中小企業経営に学ぶ―』ほか。
(構成=高橋盛男 撮影=石橋素幸)
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