転職の心得(7)転職先で、これをするのは御法度

前の会社ではこうやっていました……。つい口にしてしまいそうなフレーズだが、これは転職先で口にすべきではない、と森本さん。

「前の会社と比べることは御法度です。それを聞いて、誰もいい気はしません。逆に言うと、それをわかって入ったのでしょう?と周りは思ってしまいます。

会社によってやり方が違うのは当たり前です。意識して比べないように、言わないようにしたほうがいいですね」

変えるべき点があれば、建設的に話を進めればいいだけのこと。わざわざ前の会社を持ち出して比べることはない。社風や慣例が異なるのも当然のこと。

「大きな企業から小さなベンチャー企業に転職した方に多いのが、こんなことまで自分がやらなければいけないの?的な発言。これも御法度です」

転職者に期待されるのは、新しい発想。では、新風を巻き起こしてくださいと言われて、その気になっていいものなのか?

「よくあるのが、経営陣から、今の会社を変革してほしいと、散々言われて採用された方は、とにかく、できるだけ早く実行しなければいけないと、現状の問題点を洗い出しては、これはダメ、あれもダメ、全部ダメとやってしまいがちです。

でも、そこには、できない事情があるのかもしれません。予算の問題なのか、逆にあえてそうしているのか。その辺の事情までを踏まえたうえで提案すべきでしょう」

管理職採用された人が絶対にしてはいけないことがあると森本さんは注意を促す。

「一番してはいけないのは、現社員を敵に回すこと。何より、現場を否定してはいけません。改革するにしても、1人でできることは限られています。職場の社員と信頼関係をつくり、味方となってもらい、同じ方向を向いて、一緒に取り組むチームとならない限り、大きなムーブメントは起こせません」

まずは自分のファンをつくること。ファンを増やして巻き込むことが大事。そのためにも、自分はどんな人間なのかをみんなにわかってもらう努力をし、職場の人はどういう人なのかをキャッチアップしておく。

「すごい人が入ってきたと思って、声が掛けづらかったり、遠慮したりすることもあるでしょう。仮にもし、声が掛からなくても、自分から積極的に声を掛けながら、人間関係を築く努力はしたほうがいいですね」

最初が肝心。まずは人間関係の構築だ。

古谷治子
マネジメントサポート代表
オーダーメイド型研修で企業の課題解決、業績アップ、組織活性化を支援する。著書に『社会人1年目の仕事とマナーの教科書』ほか多数。
 

森本千賀子
morich代表
25年間のリクルート勤務を経て、独立。主に経営幹部・管理職クラスの採用支援をコーディネート。著書に『のぼりつめる男課長どまりの男』ほか多数。
 
(写真=iStock.com)
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