新卒の正社員でも「年収200万円以下」がざらにいる

私は大学の教員もしているのですが、新卒の正社員でも年収200万円を切る子がざらにいます。そのうち何人かは「だったらバイトのほうが実入りがいいな」と、すでに会社を辞めています。

田中圭一『若ゲのいたり ゲームクリエイターの青春』(KADOKAWA)

原因は日本が経済成長していないからでしょう。かつての日本では、労働環境が厳しくてもいつか報われるとみんなが信じることができました。しかし今の若い人たちは経済成長を知りません。だから仕事に対して強い嫌悪感を持っています。ブラック企業に入って搾取されるとか、嫌な上司や最悪の人間関係の中で精神を病んでしまうということを、真っ先に心配するのです。

私は若い人たちに、僕らが働いてきた経験から「いや、仕事って面白いよ!」とあらためて伝えたい。少なくともその事実を訴えていかないと、みんな働くのがつらくなるばかりです。

だから『若ゲのいたり』では、頑張っていい仕事をして、面白い仕事にありついて、ちゃんと成果をおさめた人たちを描いています。「挫折して終わりました」という話は描いていません。本当に見せたいのは「真剣に仕事をしている人たちが、紆余曲折の果てにつかんだもの」なんです。

――仕事がちゃんと自己実現の場になり得るんだということを、若い人に言いたいということですね。

そこを訴えていかないと、ほんとに日本がやばいことになると思っています。(後編に続く)

田中 圭一(たなか・けいいち)
マンガ家
1962年生まれ。近畿大学法学部卒業。大学在学中の83年、小池一夫劇画村塾(神戸校教室)に第一期生として入学。翌84年、『ミスターカワード』(『コミック劇画村塾』掲載)でデビュー。86年開始の『ドクター秩父山』(『コミック劇画村塾』ほかで連載)がアニメ化されるなどの人気を得る。大学卒業後はおもちゃ会社に就職。パロディを主に題材とした同人誌も創作。著書に『田中圭一の「ペンと箸」』(小学館)、『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』(KADOKAWA)などがある。
(聞き手・構成=的場容子 撮影=プレジデントオンライン編集部)
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