どちらが速い? ナイキvsアディダスのデッドヒート

2019年4月27日時点で、男子のMGCファイナリストは30人いる。そのうちナイキの契ランナーは5人。契約ランナーではないが、マラソン出場時にナイキの厚底シューズを着用していた選手は9人いた。つまり30人中14人がナイキを履いており、この支持率はダントツ1位だ。

ナイキを履く大迫選手とアシックスを履く川内選手。(写真=酒井政人)

トップ選手によるナイキの厚底支持率は急上昇中だが、他メーカーはどんな手で勝負を仕掛けてくるのか。いずれにしてもトップ選手の活躍が、国内のランニング市場に大きな影響を与えるだろう。

ナイキ以外の海外ブランドのシューズはどうだろうか。注目したいのは、ナイキとアディダスのバトルだ。

男子マラソンは2003年のベルリンで、ナイキを履くポール・テルガト(ケニア)が2時間4分55秒をマークし、人類で初めて2時間4分台に突入した。しかし、その後は、アディダスを履く選手たちがベルリンで何度も世界記録を塗り替えている。

まずはハイレ・ゲブレセラシエ(エチオピア)が2007年に2時間4分26秒、翌年に2時間3分59秒をマーク。その後も、2011年にパトリック・マカウ(ケニア)が2時間3分38秒、2013年にウィルソン・キプサング(ケニア)が2時間3分23秒。2014年にはデニス・キメット(ケニア)が2時間2分57秒まで世界記録を短縮した。

2012年、アディダスは業界のスタンダードとなっているEVA(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)ミッドソールにかわり、高反発でクッション性に優れた「Boost」というテクノロジーを導入。その後は、サブ2(2時間切り)を意識した商品開発を進めて、2018年3月には、27cmで片足160gという軽量の「アディゼロ サブ2」を発売した。

そして、2018年のベルリンでは元世界記録保持者のキプサングが、この「アディゼロ サブ2」を履き、ナイキの厚底シューズを履くキプチョゲと直接対決した。しかし、序盤で引き離され、2時間6分48秒の3位と完敗している。アディダスはまだ厚底シューズを出していないが、今後はどうなるか注目したい。

4月28日、ロンドンマラソンでナイキ「新作厚底」が登場する

今年7月に一般発売予定のナイキの新厚底「ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%」(写真=NIKE)

また今年、ナイキが上位を占拠した東京で、唯一割って入ったといえるのがニューバランスだ。

今井正人(トヨタ自動車九州)が6位、神野大地(セルソース)が8位に入り、ともにマラソングラウンドチャンピオンシップ(MGC)の出場権をつかんでいる。ふたりが履くのは、かつてアシックスやアディダスと契約していた伝説のシューズ職人・三村仁司氏が手掛けたシューズで、「HANZO V2」というモデル。ナイキの厚底に対抗するかのような薄底タイプだ。

4月28日のロンドンマラソンには世界記録保持者のキプチョゲ、欧州記録保持者のモハメド・ファラー(英国)らが出場する。ふたりを含め約20人が、ナイキが7月に一般発売を予定している「ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%」を履くという。同シューズは従来モデルよりもフロント部分が4ミリ、ヒール部分が1ミリ厚い〝超厚底シューズ〟になる。ナイキ勢がロンドンでどんな走りを見せるのか。シューズが進化し続ける限り、人類はまだまだ速くなりそうだ。

(写真=酒井政人、NIKE)
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