ついに始まったアシックスの逆襲「厚底」に参入

このあおりを受ける形になったのが、国内メーカーのアシックスだ。主力のランニングシューズが前年比7%の減収となり、2018年12月期決算は減収減益に沈んだ。このためアシックスは、新たな戦略で巻き返しを狙っている。そのひとつが2月28日に発売した「METARIDE」という厚底タイプの新シューズだ。

アシックスが今年2月28日に発売した厚底タイプの新シューズ「METARIDE」。(同社公式ページより)

価格は税込2万9160円とナイキの競合品と同程度。ただ重量は305g(27cm)とナイキの1.5倍ほどある。トップ選手がレースで履くモデルではないが、市民ランナーには好評だという。そして4月からプロに転向した川内優輝(あいおいニッセイ同和損保)とアドバイザリースタッフ契約を結んでいる。川内は記者会見にこう話した。

「アシックスとは長年の信頼関係がありますし、ストックホルム、ケープタウン、ゴールドコーストという大会でスポンサーも務めています。プロとして積極的な海外挑戦を進めていくなかで、グローバルなネットワークを生かして、自分自身がさらに飛躍できると思いました。今年中にはフルマラソンの回数が100回を数えると思うので、今後は『百戦錬磨のプロランナー』と呼ばれたい」

公務員時代は自費でシューズを購入していたという川内だが、今後は商品が無償提供されるだけでなく、商品開発のアドバイスも行うという。ちなみに彼のレース用シューズは「ソーティマジック」というモデルで薄底だ。

年間10レースほどのマラソンに出場する川内は、メディア露出も多い。アシックスにとっては絶好の“広告塔”になるだろう。前回大会の王者として参戦した4月15日のボストンマラソンも注目を浴びた。ほかの有名選手では、昨夏のアジア大会男子マラソンで日本勢として32年ぶりの金メダルを獲得した井上大仁(MHPS)、同大会4位の園田隼(黒崎播磨)もアシックスを履いている。

ボストンでは井上が12位(2時間11分53秒)、川内が17位(2時間15分29秒)、園田が18位(2時間15分58秒)と振るわなかったが、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)や川内が出場を希望しているドーハ世界選手権でアシックス勢の反撃が見られるかもしれない。

フランス発祥「ホカオネオネ」はナイキ厚底に似ている

昨年までアシックスを履いていた一色恭志(GMOアスリーツ)は、今年からフランス発祥のホカオネオネというメーカーに履き替えている。同ブランドはトレイルランナーやトライアスリートから支持を集めており、その特色は厚底であることだ。

一色が東京で着用していた「EVO CARBON ROCKET」にはカーボンファイバーミッドソールが搭載されており、ナイキの厚底とコンセプトは似ている。東京ではMGCにわずか4秒届かなかった一色だが、4月28日のハンブルクで再挑戦する。