「政治を男だけに任せたら権力闘争にあけくれる」

一方、高齢化社会での女性活用について小嶋はこう語っている。

「家庭で老人の面倒を見るのは女性と相場が決まっていました。しかし、第二の青春ともいうべき60歳以降の人生を老人の世話だけで過ごすことが果たして女性の幸せでしょうか。ひたすら忍従して自分を犠牲にする生活にはさよならしなければなりません。もっと社会的なプレーで高齢化社会を支えていく基盤をつくらないことには、女性自身がつぶれてしまいます」

平成30年度版「高齢社会白書」によると要介護3以上の老人が210万人(平成27年現在)といわれている。これらを女性が、しかも老々介護といわれるような年齢で行っては、それでは女性もつぶれるだろう。

そうならないためには、安心・安定・安全のための制度、法律整備が必要である。小嶋は日本より先に高齢化社会を迎えた福祉国家スウェーデンの例を挙げて、こう話す。

「女性が行政や政治など意思決定機関に参画するという決心と実行力が必要になってくるでしょう。政治にしても男だけに任せていたら権力闘争にあけくれて何をしているのかさっぱりわかりません。福祉国家で知られるスウェーデンでは国会議員の40パーセントが女性、大臣に至っては22人のうち11人が女性だそうです。国家や自治体の意思決定に女性の意見が十分反映されるため、日本より先に迎えた高齢化社会は、男女共同でことに当たっているということです」

60歳以降を「第二の青春」として過ごせるように

小嶋は若い世代の女性の奮起を求めている。

かつて、大卒社員を大量に採用したとき、ジャスコは人事担当常務(小嶋のこと)が「女性」だから女性を大切にする、女性を優遇するといったようなことを言われたことがある。もちろんそんなことはなく、四年生大卒者が入社した時点では男女差はなく、むしろ総じて女性のほうが優秀であるから採用したのである。

それも小嶋の女性に対する期待のあらわれのひとつといえるだろう(※)

※編集部注:イオンの2017年度の新卒採用における女性の割合は約54%。また2013年には株主総会で「女性管理職比率を2020年度までに50%へ引き上げる」と宣言している。2017年度の女性管理職比率は27%だった。

また、小嶋はジャスコ退任後も四日市フォーラムを指導者として立ち上げ、働く女性を交えて講演会などを実施して見聞をひろめさせ、実施運営の役割任務、スケジュールの進捗管理等、企業運営のノウハウを教えた。その実際の活動から得た「女性の能力は高い」「溌剌とした構成員」の姿をみての実感もあるのだろう。

高齢者介護の問題は、私的な面では、夫君の脳梗塞後の熱心なリハビリから得たものと推測されるが、いずれにせよ60歳以降の人生を第二の青春として、女性がいきいきと幸せであることを期待している。