ボイスサンプルが社長の目に留まり声優に
たとえばアクロスエンタテインメントに所属する、花江夏樹さん。
朝のテレビ番組、「おはスタ」のMCで人気を博した彼は、12年に正式所属になってから、早々とトップ声優の仲間入りを果たした若手のホープです。花江さんは、昔からの憧れである山寺宏一さんがアクロスにいるということもあり、直接事務所へボイスサンプルを送ったそうです。そして送ったサンプルが社長の目に留まり、社内ワークショップを受け、そのまま正式所属となりました。
確かに、彼には豊かな才能があったから受け入れられたのであり、才能と実力が伴わない志願者からの入門希望は、ほとんどの場合、門前払いをされてしまうでしょう。ただ、稀な例とはいえ、人より抜きん出た実力さえ備わっていれば、彼のように「飛び級」をすることは可能なのです。だから、繰り返しますが声優への道のりを歩むために必ず声優学校の門をくぐらなければならない、などということはありません。そもそも僕自身がそうでした。
業界で戦えるだけの実力が備わっているか
ただ業界全体として、良い側面として声優を目指す若者に具体的な道筋を作ろう、技術を高めようと考えた結果が今の状況を生んでおり、一方で悪い側面として、あたかもそれが近道のようにイメージが作り上げられてしまった、ということがあります。
確かに「学校に通っている」という事実があれば、安心感は得られるかもしれません。まわりに同じ志を持つ若者がいるでしょうから、そうした環境も心強いかもしれません。
しかしそれだけのことであり、何かの資格が得られるわけでも、事務所へのパスポートが渡されるわけでもない。要は、あなた自身に業界で戦えるだけの実力が備わっているかどうかなのです。
もし花江さんのように、憧れの先輩の事務所で声優になりたいといった強い意志や、抜きん出た才能が自分にあると感じるのなら、回り道などせず直接問い合わせをしてみてもいい。その事実だけでも、ぜひここで知っておいてください。
声優
1967年、埼玉県生まれ。出演作に「AKIRA(金田役)」「頭文字D(武内樹役)」「トリコ(サニー役)」「ドラゴンボール超(シャンパ役)、「斉木楠雄のΨ難(斉木國春役)」など多数。子役から芸能界入りした、芸歴30年以上のベテラン。2013年、第7回声優アワード「パーソナリティ賞」受賞。ラジオ大阪「岩田光央・鈴村健一スウィートイグニッション」などにレギュラー出演中。ラジオ大阪声優&アナウンススクールなどで講師を務める。通称『兄貴』と呼ばれ、後輩やファンに慕われている。