企業の一番の「宝」は何か。業種によって、経営者によって、考えは違うだろう。ITベンチャーのニューフォリアを率いる多田周平さんは「何より大事なのは人だ。それ以外ない」と断言する。そんな多田さんは、今、中小企業のイメージをくつがえす「人材育成」を模索している――。

いちばん難しくて大切なのは「人」

日々の経営には難しいことが多々あります。会社が大きくなり社員数が30人くらいになったとき、中小企業の経営で一番難しいのは「人」だ、と感じました。私は日々「人」について考え続けています。「人」こそが企業の財産だからです。

中小企業は中途採用がメインですから、社員の業務経歴は十人十色。仕事のやり方や考え方もさまざまです。

大手企業には、長年培われてきた企業固有の文化や慣習があり、それに合わせて仕事をすればうまくいくというやり方や、「これが正しい」と皆が思える共通認識がある。

しかし中小企業、ことさらベンチャーにはそれらがない。社員それぞれに異なる仕事のやり方、考え方、価値観があり、それが噛み合わないときにうまく落し所を見つけられない。こういうところが、中小企業の弱点でしょう。

合理とはどういうことか?

たとえば、こんなことが起きます。同じ部署のAさんとBさんで、意見がぶつかる。それぞれの正義があって、どちらの意見も間違ってはいない。でも、どちらかを選ばないと仕事が先に進まない……。

そんなとき、解決策になるかどうかわからないですが、私は「合理性」についての話を社員によくします。

「『合理』というのはどういうことか考えてほしい。『合理』とは色んな理を合わせるという意味です。自分の側でも相手の側でもなく、間で折り合いがつくポイントを探す。それこそが『合理』であり、答えです。完全に納得できないかもしれないけれど、そこに皆の理が合わさる答えをつくらないと、1つの結果は出ない」

というような話です。