「これからはインターネットの時代」

私は学生のときは「卒業したら探偵になるか、南米に金を掘りに行く」と荒唐無稽なことを言っていました。当時は就職氷河期真っ只中で「そんなこと言ってるとまっとうな人生をおくれないぞ」と周囲の友人に諭されて、やむなく就職活動を始めました。

入社試験を受けたのはNTTさんとバンダイさんの2社でした。バンダイは「おもちゃの会社だから面白そう」というシンプルな理由です。一方で、学生時代の「経営情報システム」ゼミでアメリカから帰国した教授が「これからはインターネットの時代になる」と言って、当時のブラウザのMosaicやEmacsを使わせてくれていました。1995年頃のことです。日本ではその存在がまだあまり知られていなかった時代にインターネットを学び、これは「面白そうだな」と思いました。NTTは当時インターネット、マルチメディアに力を入れていた数少ない企業でした。

最終的にはNTTから内定をいただき入社することになりました。就職氷河期に運がいいと言われますが、私は運は抜群に強いんですよ。マスカケ線という手相の強運な線が私は両手にあります(笑)。

NTTの社長にはなれない

入社後は、企業や一般家庭を回ってインターネット回線の販売などをやりました。自らセミナー講師を務め、インターネットの普及活動もやっていました。電話がかかってきて「すみません、インターネットください」と言われたりしました。そんな時代でした。

「いつか起業する!」と明確に思っていたわけではありませんが、同期たちと将来の話になり、私は「どうせなら社長になりたいな」と言いました。「めざすなら社長でしょ」という軽い気持ちでした。しかし周囲から「それは無理だよ」と言われました。「NTTの社長は、基本的に東大か京大卒でないと」と。

確かに私立大学出身の自分では分が悪い。それなら何か考えなきゃな、とぼんやりと思いました。「社長が無理なら部長を目指す!」というのもおかしいでしょう。どうせならトップを狙いたい。このときから、起業を少しずつ意識していたかもしれません。