成功する経営者の多くは社運を変える出会いに巡り合っている。インタラクティブ動画の分野で注目を集める「TIG(ティグ)」を開発したパロニムの小林道生社長も、そんな一人だ。小林さんは「周りの人からは、あなたの率直さがいい出会いに繋がっているのではないか、と言われます」と語る。いい出会いを引き寄せられる人はどこが違うのか――。

テレビ画面から買い物ができたら便利なのに……

当社のインタラクティブ動画技術「TIG(ティグ)」は、たとえば、アパレル製品のプロモーション動画でアイテムや登場人物にタッチすると、詳細情報にアプローチできる、といったもので、当社が独自開発した新技術です。

「TIG(ティグ)」のアイデアが生まれたきっかけは、ソフトバンクで仕事をしていた頃の経験でした。私は日本テレコム(現・ソフトバンクグループ)を経て、ソフトバンクで映像伝送技術を担当していました。このときの仕事を通じて、映像コンテンツの持つ「豊富な情報量」や「視聴者の心を動かす力」に注目していたんです。

当時はちょうど、ドラマで登場人物が身につけているグッズが話題になり、インターネットの電子商取引(EC)サイトでバンバン売れるようになりつつある時期でした。私はその状況を見ながら「視聴者がドラマを観ていて“あの時計カッコいいな”と思ったら、その画面から即座に買い物ができる……そんな機能があったら便利なのに」。そんな思いを漠然と抱いていました。

2008年のある日、ソフトバンクの社内食堂に100人ほどの営業・技術担当者が集められ、「iPhone」の日本初号機が独占販売されることを聞かされました。一部の営業マンにデモ機が配布され「こいつを徹底的に使い倒せ。そして、これが世の中をどんなふうに変えていくインフラになるのか、新しい文化や生活を生み出していくかをひたすら考えろ」という課題が課されました。

その後、社内で“新規事業アイデア3000本ノック”という企画が開催され、私はTIGの原形となるアイデアで応募したんです。結果は、2次面接で落選でした。落選理由は「入口はすばらしいアイデアだが、出口イメージが描けていない」。つまり、映像からジャンプした先に、どんなサービスがあって、どのようにマネタイズするのか? そのサービスによって誰が喜ぶのか? そのイメージがまったく描けていなかったんです。今思えば、落選するのは当然でした。ちなみに、そのオーディションで大賞をとったのが、コミュニケーションロボットの「Pepper」でした。