フラットな組織がベストではなかった

働きやすさという点では組織の形態も重要です。最初は「組織はフラット型がいい」と思い、そうしていました。アメーバ経営のように自主的な組織もアリだな、と。フラットな環境のほうが働きやすいだろうと思ったからです。社員が10人くらいのときはそれでうまく回っていましたが、20人になった時点でうまくいかなくなりました。

中間層のポジションの人が増えてきたからです。20人を超えると私一人が全員をマネジメントするのは難しくなって、私以外にマネジメントを担当してくれる中間層の人が増えてきます。経営者と社員の間には金銭的な契約が成り立ちますが、中間層の人たちが他の社員をマネジメントするときにはそのインセンティブが効かない。フラットな組織では経営者以外のマネジャーのマネジメントコントロールが効きづらいんです。

社長は、ただの役割

マネジメントする側もされる側も、自分の立ち位置や役割がつかめず、互いにどう振る舞うべきかが分かりにくくなって軋轢が生まれてしまう。そんな経験も踏まえて、今は組織を階層化しています。

企業組織の階層化には一定の合理性はあると感じています。ただ、各組織は階層化しつつ組織同士はフラットという構造にしています。これがどこまでうまくいくかは模索中。トライ&エラーです。

私自身の意識はフラットでいたいと思っています。あまり社長然としたくない。自分で始めた会社なので“言いだしっぺ”として多少はリスペクトしてね、という気持ちはありますが、基本的には社長というのはただの役割だと思っていますし、これからもそう思っていたいです。

インターネット自体がフラットでオープン、そしてフェアな存在です。インターネットのそういう部分に魅力を感じて関わってきたところもある。私も人としてそういったところは大切にしていきたいです。

(構成=山田由佳 撮影=石橋素幸)