福岡、島根、福井、徳島では「保守王国」が割れた

10知事選のうち、福岡、島根、福井、徳島の4県で保守分裂選挙となる。このうち福岡、福井、徳島の3県は、もともと自民党と良好な関係だった現職に、自民党の全体もしくは一部が反旗を翻す構図。島根は引退する現職の後継候補を一本化できずに分裂選挙となった。

4県は、いずれも自民党が伝統的に強い保守王国だ。4年前、2015年の前回選挙では、いずれも自民党などが推す現職が圧勝している。ところが、今回は「王国」が割れる。

4年前の2015年の政治状況をおさらいしておきたい。

この年は4月に統一地方選が行われたほか9月に自民党総裁選が行われ、安倍氏が無投票当選した。国会では憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を一部可能にする安全保障関連法を成立させた。

この年の9月には安倍氏の妻・昭恵氏が森友学園で講演し学園小学校の「名誉校長」を受諾。また、愛媛県の文書によると、加計学園の加計孝太郎理事長が同年2月に安倍氏と面会。獣医学部新設計画について話し合ったのではないか、という疑惑にさらされている。

「野党はダメ、しかし安倍政権には疑問」というねじれ

また、最近になって明らかになったことだが、毎月勤労統計を巡り、統計方法の変更を首相周辺が厚労省に働き掛けたのではないかと疑われているのも同年9月のことだ。

つまり安倍政権の政策、政局面での問題の多くがこの年に集中している。このころから強権的ともいわれる政権運営が目立つようになり、官僚たちは忖度するようになった。2015年は「安倍1強」が確立された年、と言ってもいい。

その後4年間、中央政治では「安倍1強」が続く。しかし、地方では人口減少や景気回復の遅れなどによって安倍政権に対する疑問の声が高まる。昨年9月の自民党総裁選で安倍氏の対抗馬・石破茂元幹事長が地方党員票の45%を確保したのも、安倍政権に対する地方が抱く疑問の表れだ。

野党には任せておけない。しかし安倍政権には疑問を感じる。このねじれが保守分裂が続出する一因になっている。