一方、実践には「最適な道を行く」と「歩くスピードを上げる」という2つのアプローチがあり、重要なのは前者のほうです。最適の道筋が見えていなければ、いくら速く歩いても無駄になりますから。

2023年開業に向けて着々と計画が進む北海道日本ハムファイターズのボールパーク(予想図、株式会社北海道ボールパーク提供)。

では、どうやって最適な道を見つけるのか。

私のとっておきの鍛錬法は「1人プレス発表」です。「多くのメディアが注視しているなかで自分が新プロジェクトの発表役を務める」ことを想定し、発表の内容を文章化していくのです。建築プロジェクトであればその概要、それがクライアントや周辺地域にどのような価値をもたらすかをイメージし、「どこが記事として取り上げられるか」を考えながら書いていきます。

コツはそのプロジェクトが成功した場合を想定して、そこから逆算していくこと。建設業界以外の人にも伝わるように、余計な説明を削り、わかりやすく短い言葉で表現するよう心がけます。ひと通り文章化できたら、空いている会議室を押さえるなどして、時間を計り実際に声に出してしゃべってみます。

プロジェクトの本質的な価値を見出し、印象的な言葉が生まれてくると、文章を声にしたときに「エッジが立った」感じが出てくるものです。そう感じられるようになるまで言葉と内容に工夫を重ねます。これを繰り返すことで、確実にプレゼンの力が高まっていきます。

TO DOリストと手帳はこう使う

歩くスピードを上げる――すなわち仕事の効率化のための方法の1つがTO DOリストをつくること。これは仕事を「見える化」するうえで効果的なメソッドですが、単に箇条書きするだけでは優先度や必要時間が不明なため、私は工夫を加えて使っています。

まず「すべき仕事」の左側に優先順位を数字で書き込み、右側にはその仕事をする時間帯も書き込むのです。こうしておくと予期しない緊急の仕事が入ってきた場合も、リストのうちどれを削り、緊急案件をどの時間帯にはめ込めばいいかが一目でわかります。

しかし、実務上の問題点は「自分1人では仕事は完結しない」ということです。コンサルタントはクライアントから依頼を受けて設計者や施工者、官庁などとの間に立ち、提案や調整を繰り返す立場ですから、個人の努力だけではどうにもならない問題が過半を占めます。そのため私は、部下など関係者に出す依頼のタイミングまで決めておき、TO DOリストのなかに取り込んでいます。