店の赤字は自分で補填、賄賂も要求され……
当然ながら、こんな状態ではお客は来ない。しかもその内装費や家賃のみでなく、仕入れや会計、法務なども、金額が地元の実際の相場よりも約5~6倍。さらにはI氏への不透明な“顧問料”などまで請求されたため、店舗の維持コストが法外にふくれ上がり、当初から店は大赤字となった。
こうなると収益どころか、元金も返ってこない。そのうえで毎月の多額の赤字を補填するためだとして、Aさんは多額の支払いばかり求められるようになった。そしてG氏やH氏からは、店の会計資料も1年以上何ひとつ出てこない状況が続いた。
Aさんは、G氏と視察した人気店とのあまりの違いに、本当に同じG氏が手がけているのか? と疑問に思った。すると、その後に現地でできた飲食店仲間たちの話から、G氏とその人気店とは何ら関係がない事がわかったという。
「現地の日本人で飲食をやっている人から、『G氏は、あの人気店とは全然関係ないよ』といわれました」(Aさん)
実はG氏は、その人気店の従業員に個人的に賄賂を払い、その場でだけあたかもオーナーであるかのように対応してくれと依頼していたのだという。
こうして大赤字となったAさんの店舗だが、高額な仕入れや法務、会計などの契約も、G氏との契約を切る場合は多額の違約金が発生する契約になっており、Aさんが店を維持するには、これらの高額なコストをG氏に支払い続けなければならなかった。
不法就労の容疑で賄賂を要求される
そこへ追い打ちをかけるように、「名前を勝手に使っている」として、Aさんがつけた大手チェーン店名の海外での利用権を有する米国の会社から通知書が届いた。実はG氏の「有名ブランド店名を使える」という話も真っ赤な嘘だったのだ。
慌てたAさんは急いで謝罪し、店舗名を新しい名前に変更したという。
「脱サラまでして投資したので、なんとか立て直そうと店舗で必死に働いていました。すると今度は、タイのイミグレーション部門だという連中が複数人、店に来たのです」(Aさん)
彼らは、不法就労の容疑でAさんを取り締まりに来た、と告げたという。
「ワークパーミット(労働許可)無しで外国人が働いているので逮捕しに来たのだ、と私に言ってきました。私は、G氏に約5000万円も払って労働許可も得るよう依頼していたという説明をしましたが、イミグレの人間は聞く耳も持ちませんでした」(Aさん)
このイミグレの面々は、「騒ぐと逮捕するぞ」「日本に強制送還にするぞ」と脅してCさんを黙らせようとし、さらには事件を解決するためだとして60万バーツ(約200万円)の賄賂を要求してきたという。
現場を立て直そうという努力も妨害され、投資資金や赤字の補填で支払われたお金は巻き上げられてしまうというわけだ。