※本稿は、山田寛英『不動産投資にだまされるな』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。
空室率が上昇していく可能性は極めて高い
2016年10月、総務省統計局は平成27年国勢調査の人口等基本集計結果を発表。それによると人口は5年前と比較して96万2607人減少(0.8%減)し、1億2709万4745人となった。つまり、日本の人口減少がいよいよ現実のものとなったのである。
しかし、投資用など自己の居住以外の目的で物件を購入する際に利用するローン、いわゆるアパートローンの残高はここ数年増え続け、賃貸物件の数もそれに応じて増えている。
この先、新築の賃貸物件の数がどうなるかは断言できない。しかし昨今、物件供給数が増加したことは明らかであり、そこに人口減少が重なれば、ここから先、空室率が上昇していく可能性は極めて高いということははっきりと言える。
なお賃貸物件が建築され続けてきた背景には、「土地を手放したくない」と考える地主にとって、相続税対策の合理的な選択肢の一つになっていた、という事情もある。国策の失敗なのかもしれないが、とにかく需要を無視して、供給ばかりが増えてきたことは事実だ。
他業界に比べて進化のスピードが圧倒的に遅かった
一方、著書『不動産屋にだまされるな』(中公新書ラクレ)に詳しく記したが、不動産業界の進化は他業界に比べてそのスピードが圧倒的に遅かった。ところが近年テクノロジーやサービスが急激に進化し、それこそスマホ一つで気軽に賃貸経営を始めることができる状況が生まれた。それに伴いプレイヤー、つまり大家の数は増え続け、競争はますます激しくなったのである。
供給がよどみ始めている中で参入する人の数が増えた結果、特にアパートローンにまつわるトラブルが頻発し始めた。そのため17年くらいから金融庁が監督を強化。各金融機関のアパートローンへの姿勢が変わり始めると、さらに多くの問題が露呈し始めた……というのが現状である。
しかもそうした問題は、決して個人の投資家だけに起こりうるものではないというのが、また不動産投資の怖いところである。