「抵当権をあえて設定しておく」という自衛法

でも物件が更地や駐車場、賃貸になったりしていると、誰がその所有者なのかすぐには分からない。その土地に長く根付き、近所付き合いも深い場所なら「あの土地は○○さんのもの」と辿り着けるかもしれないが、それでも実際の所有者かどうかを特定するのは難しかったりする。

制度がこのような状況にある以上、土地を持つならばそれなりの知識や対応が求められるのは自明だ。しかし不動産投資がブームとなった今、そうしたふわふわした制度下にあることを理解しないまま、続々と大家となろうとする状況が垣間見られるから、不安を増幅させられるのだ。

これは蛇足だが、不動産所有における自衛法としては「抵当権をあえて設定しておく」という対策がある。

不動産に抵当権を設定しておけば、売買に関して抵当権設定者の承認が必要となる。つまり銀行からお金を借りて抵当権を設定すれば、その土地をめぐって売買が起こった際、銀行は必ず本人確認を行うことになる。この過程で土地の持ち主が明確にされるので、犯罪グループのターゲットになる可能性を事前に低くすることができるのである。

なぜ法も税も、味方をしてくれないのか

こういった王道的な知恵や工夫、つまり「本質」のようなものは、代々の不動産オーナーたちには当たり前のように受け継がれていたりする。しかし新参者で、すぐに稼ぐための「メソッド」「ニッチなテクニック」ばかりを追い求める投資家には、なかなか周知されることがない。

このことは近刊『不動産投資にだまされるな』に書き記した真理の一つである。

ここまでお読み頂いて「問題が山積していることが分かっているのに、国や法律のフォローが手薄なのでは」などと思われた読者もいるのではないだろうか。

それは、不動産投資とは「投資」というより「事業」であり、弱肉強食の世界だからに相違ない。

住むためのマイホーム購入のように、生活と密着したもので、知識の多いプロと知識の少ないアマチュアの取引であるなら、法律上でも「アマチュアを積極的に保護するべき」とされる。