「外注」に違和感

ただ、私が違和感を覚えたのは、オークションのシステムを“外注”していたことにありました。ビジネスの心臓とも言えるシステムを外部に任せてもいいのだろうか、と思ったのです。

とはいえ、私自身はシステム開発の経験はありませんし、コンサルタント時代の経験からロジックで説明できない状態で意見することに抵抗がありましたので、気持ちを切り替えてネットオークション事業に力を注ぐことにしたのです。

しかし、結果として私たちは競合に勝つことができませんでした。そのため、当時の自分の直感をもっと大事にしておけば違う結果につながっていたのではないか、という気持ちが今でもあります。

「センスメイキング」によると、物事を推論するときには先入観を持たずに事実を広く見て、ひらめいた仮説的な連想から考える「アブダクション」というアプローチが有効とのことです。未知の領域にチャレンジするときは、論理的思考よりも、自らのひらめきを信じたほうがいいのかもしれません。

“儲からない”チケット販売に挑戦できた理由

Peatixは、2011年に前身となるOrinocoによってスタートしたサービスですが、実はビジネスモデルとしては決して大きな利益を見込めるものではありませんでした。

というのも、従来のチケットビジネスは、東京ドームのコンサートのように大規模な人数を集客できるからこそ数%の手数料でもマネタイズできるモデルであり、30人程度の小規模なイベントの主催者をメインターゲットとするPeatixは薄利多売にならざるをえない状況だったからです。

しかし、私を含めPeatixの創業メンバーは、サービスが世の中に広がっていくイメージを持っていました。Peatixを利用する人が増えコミュニティ化していけば、メディアとしての価値も生まれてくるのではないか、と。

そうした予感のとおり、Peatixは創業7年目に入った現在、会員数が350万人を超え、月間6500件のイベントが常に掲載されるまでになりました。このおかげでPeatixの広告主収入も得られるようになり、手数料収入と広告収入が逆転しつつあります。

センスを育て、自らの直感を信じて行動することができると、先行者利益を得ることができます。周りの人たちがロジックにとらわれて動けない、その隙に現場に飛び込み行動すれば、ビジネスの勝利に近づくことができるはずです。

竹村詠美(たけむら・えみ)
一般社団法人 FutureEdu 代表理事、Peatix.com 共同創設者
アマゾン、ディスニーなどの日本経営メンバーとして、サービスの事業企画や立ち上げ、マーケティング、カスタマーサポートなど幅広い業務に携わる。2011年に立ち上げた「Peatix.com」は現在27カ国、350万人以上のユーザーをもつ。現在は教育を中心に幅広く活動中。Most Likely to Succeed 日本アンバサダー、Peatix Inc. 相談役、総務省情報通信審議会委員なども務める。
(構成=小林 義崇 撮影=原 貴彦)
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