コンサルの仕事を“魔術師”のように感じた

つまり、互いの違いに対する“センサー”をはたらかせられるようになったのですが、これはグローバルにビジネスをするうえでは、非常に重要な能力だと考えています。

「センスメイキング」には、無味乾燥な事実を並べた「薄いデータ」ではなく、事実の文脈までをとらえる「厚いデータ」にこそ価値があるといった記述がありました。私が学生時代にアメリカで得た厚いデータは、今でもビジネスや日常生活で活きていると思います。

自分なりのセンサーをはたらかせることは、私のキャリアの変遷にもつながっていると思います。

アメリカの大学院を卒業後、マッキンゼーに入社したのですが、ここでコンサルティングという仕事を選んだのは、マッキンゼーの先輩でもある大前研一さんの著書に影響を受けたことも理由に挙げられます。

仕事を通じて社会に大きなインパクトを与えたいと考えていた私は、コンサルタントの仕事ならそれができると思いました。また、世の中の複雑な事象を数字で的確にとらえて、単純明快な解を出すという仕事がまるで魔術師のように感じられ、自分もそうした力を身につけたいという気持ちもあったと思います。

コンサルからIT業界に飛び込んだ

ただ、結果として私はマッキンゼーを退職し、1999年にIT企業のエキサイトに転職しました。それまでの約5年間はコンサルタントを続けてきましたから、異業種に参入した形です。

当時まだ不確実性の高いIT業界に飛び込んだきっかけは、コンサルタント時代に業務に取り入られはじめてきた“e-mail”の登場にありました。当時はまだ一般的に「何の役に立つの?」という評価でしたが、私は「世界中にメッセージを送ることができる技術」に大きな可能性を感じ、次第に「インターネットで何かを行いたい」と思うようになっていました。

このように、直感的にIT業界に飛び込んだことは、結果として今のキャリアにつながっていますし、最近はますます自分の直感を信じて行動できるようになってきましたが、若い頃は自分の直感を信じきれず失敗した経験もあります。

たとえば、エキサイトに勤めていた頃です。当時、私はネットオークション事業に新規参入するプロジェクトを任されていたのですが、このとき、「厳しいだろう」という頭のどこかで直感していました。

しかし、当時の状況を論理的に考えれば、新規参入することは決しておかしなことではありません。Eコマースが伸びていくことは明らかであり、競合もそこまで強くない状況でしたから。