“思い立ったらすぐ行動”のシンガポール人
Peatixは、グループ・イベントの管理や、チケット販売、集客を行えるウェブサービスとして日本では認知が広がっていますが、日本の実績を示したところで、東南アジアの人に受け入れられるわけではありません。やはり、現地の人がどのような文脈でイベントを開くかを知り、その気持ちに寄り添う必要があるのです。
私はシンガポールに3年ほど滞在し、イベントのお手伝いなどを続けたなかで、日本との違いが見えてきました。ひとつ例を挙げると、イベントを“早く派手に”行いたいという国民性でした。
日本の場合、心をこめて準備して少人数でイベントを開く人が多いのですが、シンガポールでは、思い立ったらすぐに行動し、おしゃれなスポットで有名人を呼んだりして派手なイベントをする人が多い。ただ、バブル時代の日本とも違い、収益を孤児の施設に寄付するなど、ソーシャルへの意識も強く、ミレニアム世代の価値観を感じさせます。
このような彼らの心を理解したうえで、そこに“はまる”サービスとしてPeatixを見せるように意識したことで、シンガポールにおけるPeatixの利用者は増えていきました。
“波風を立たせない”人間を評価しない米国
これまで、私はマッキンゼーのほか、Amazonやディズニーといったグローバル企業に勤め、仲間とともにPeatixを創業したのち、21世紀教育分野を中心に活動しています。こうした仕事では異文化の人たちの気持ちを理解するセンスが大切です。
私の場合、そうしたセンスを20歳になって経験したアメリカ留学で得ることができたと思います。アメリカに身を置くと、文化や生活スタイルが日本と大きく違うことに驚きました。それまでもテレビなどを通じてアメリカの文化に触れてはいたのですが、やはり現地で生活すると解像度が高くなります。たとえば生活に根付いたキリスト教の影響から、施しの文化が根付いていることなど、さまざまな日本との違いが見えてきました。
また、日本で過ごしていると、波風を立たせない、いわゆる“最大公約数”的な人が評価されがちですが、アメリカでは真逆ということも知りました。自分の強みをアピールできない人は評価されませんから、自分と相手の円が重ならない部分に目を向けなくてはなりません。
こうした経験のおかげで、私はコミュニケーションをする相手との違いをネガティブに捉えるのではなく、むしろ違っていることを前提として、お互いを理解し合おうというスタンスを取れるようになりました。