【田原】難航していた話を、川淵さんはどうやってまとめたのかな。
【葦原】パッションでしょうね。川淵にモチベーションの源泉は何かと聞いたことがあります。すると、「俺を衝き動かすのは怒りだ。このままでは日本のスポーツ界がダメになる。だから俺がやるんだ」と言う。じつは川淵はJリーグのときも「サッカーのため」と言っていないし、Bリーグでも「バスケ界のため」とは言わなかった。つねに「日本スポーツ界のためなら俺はやる」。その熱い思いに共感した関係者が多かったんじゃないでしょうか。
【田原】パッションは大事だけど、それだけで動くかなぁ。
【葦原】ターニングポイントになった会議があります。それまでリーグをまとめる会議は非公開でしたが、川淵が「オープンに議論しよう」と言ってマスコミを会議室に引き入れたんです。その瞬間、空気が変わって1つになったと聞いています。
【田原】それはおもしろい。先日のJOC竹田恆和会長の質疑応答なしの会見が象徴的だったけど。日本のスポーツ界は密室主義なところがあるからね。
【葦原】川淵は本当に表と裏がなくて、社内でも外でも言っていることが同じです。さらにビジョンをぶちあげるだけでなく、その根拠を自分なりに添えて話す。だから彼の言葉は人をひきつけるのでしょう。
【田原】先ほど葦原さんがBリーグに興味を持った理由が2つあるといった。1つは川淵さん。もう1つは?
【葦原】バスケのポテンシャルです。実は世界で一番、競技人口が多いスポーツはバスケなんです。
【田原】えっ、そうなんですか。僕はサッカーだと思ってた。
【葦原】世の中のほとんどの人はそう思っていますが、世界のバスケ人口はサッカーの約2倍。というのも、サッカー人口は圧倒的に男性が多いのに対して、バスケは女子も盛んだから。日本で運動神経のいい女の子はだいたいバスケかバレーに行きますが、世界も同じです。
【田原】国内だと競技人口は何人?
【葦原】サッカーが約90万人、バスケは約60万人で、サッカーが1.5倍になります。ただ、市場規模はそれ以上に差をつけられている。競技人口を考えれば、バスケはもっと稼げていい。そのギャップに魅力を感じました。