民間企業のノウハウを積極的に活用すべき

わが国の統計制度は、危機的状況に直面していると考えるべきだ。過去から現在まで、すべての統計調査が適切に行われていたか、政府は迅速に調査を進めなければならない。その上で、統計の信頼回復に取り組む必要がある。

政府は、この問題に真剣に取り組まなければならない。特に、経済分析のうえで欠かせない毎勤が不適切な調査に基づいていたことは、外国人投資家や各国政府の政策担当者にかなりのショックを与えた。

政府に求められるのは、ガバナンスの確立だ。統計をはじめ、政府の業務が適切に行われているかをモニターし、より良い成果を目指すためにガバナンスが働くようにしなければならない。

そのためには、統計制度の運用に関する政府の認識を、根本的に改める必要がある。まず、民間企業のノウハウを積極的に活用すべきだ。政府内の限られた統計担当者を中心に問題の解決にあたることが信頼回復につながるとは考えづらい。外部の視点から、客観的にこれまでの統計調査が適切かつ効率的に行われていたかを確認する必要がある。民間シンクタンクに統計調査を委託することも積極的に検討すべきだ。

当たり前の「デジタル化」を政府は遠ざけてきた

デジタル技術の活用も重要だろう。小売物価統計調査のように企業などへの訪問が必要な統計調査は多い。アンケート調査を行うウェブサイトを構築すれば、調査側にも回答する者にとっても負担は軽減できる。

紙ベースでアンケート調査などを行うことに比べ、データの保管や不正の発見も容易になる。デジタル化は統計データの利便性向上にもつながる。そうした当たり前のことを、政府は取り入れてこなかった。

不適切な統計調査の発覚を受けて、安倍政権は景気判断を変えないとの見解を示している。一方、ガバナンスをどう機能させるかについては、具体的なプランが示されていない。政府が、今回の問題の深刻さをどの程度理解しているのか、気がかりだ。

統計不正の問題は、政府の信用を左右する。政府は統計制度に関するガバナンスを確立し、これまでの景気判断と政策運営が正当であったか否かを明らかにする必要がある。

真壁 昭夫(まかべ・あきお)
法政大学大学院 教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。
(写真=時事通信フォト)
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