結局「加熱式」の特性は無視された!?
2020年の東京五輪開催に合わせた受動喫煙対策の強化をめざし、18年7月に成立した改正健康増進法。医療・教育施設や官公庁等では原則として敷地内禁煙、飲食店やホテルやオフィスなど、多数の人々が利用する施設では、原則として屋内禁煙が義務付けられるほか、違反に対する指導や勧告で改善が見られない場合について、新たに罰則(最高50万円の過料)も設けられた。20年4月1日の全面施行を前に、厚生労働省では現在、例外的に喫煙が認められる喫煙専用室の仕様など、省令で定められる細部の詰めが行われている。
受動喫煙対策の強化というアイデアそのものに、異論を唱える向きは少ないだろう。一方で飲食店などの業界団体からは、設備の導入コストや建築上の制約、そして1年半にも満たない時間的制約があるなか、一律に罰則つきの規制強化が行われることへの戸惑いの声も上がっている。
これまでは店内に仕切りを設けたり、禁煙フロアと喫煙フロアを分けたりといった「分煙」での対応が認められていたが、改正法の全面施行後は、所定の煙流出防止措置を施した喫煙専用室(飲食等は不可)でのみ喫煙可とする対応が義務付けられる。個人または中小企業が経営する100平方メートル以下の既存の飲食店では、経過措置として標識を掲示すれば店内での喫煙または分煙が認められるが、全面施行以後の新規店舗は、規模にかかわらず新基準への準拠が必要になる。
室内全面禁煙で先行する欧米などの諸外国では、屋外での喫煙は認められているケースが多く、「店内は禁煙、吸いたい人はちょっと席を外して外で吸う」というスタイルが一般的だ。だが日本では吸い殻のポイ捨て問題などから、屋外での禁煙措置が先行。多くの都市で路上喫煙や歩行喫煙が条例等で規制されており、飲食の合間に外で喫煙できるとは限らない状況だ。一方、厚労省が想定する規定(入り口付近で風速0.2m/秒以上の内側への気流を確保)を満たす喫煙専用室の設置には屋外排気型の換気装置が必要で、ビルのオーナーがその工事を認めないケースも考えられる。中小の新規飲食店が喫煙も可能な環境を整えるには、コストを含めかなり高いハードルが要求されることになりそうだ。