※本稿は、原昌平『医療費で損しない46の方法』(中公新書ラクレ)の第V章「働き手が病気・けがをしたら」の一部を再編集したものです。
手続きをしないともらえない「傷病手当金」
公的医療保険には、病気やけがをしたときの医療サービスだけでなく、現金が給付される制度があります。ただし、自分から手続きをしなければ、もらえません。条件を満たしていても、制度を知らないと損をするわけです。
なかでも、働き手として、ぜひとも頭に入れておくべきなのは「傷病手当金」です。病気やけがで仕事を休んだときに、生活費をそれなりに確保できるからです。
傷病手当金は、雇われている人向けの健康保険の加入者が、病気やけがで仕事を休んだ結果、給与が出なくなるか、元の3分の2程度未満に減った場合に支給されます。労災保険の対象となる業務災害・通勤災害以外の病気やけがで休んだときの所得保障制度です。
以下、健保組合、協会けんぽに加入している人の場合で説明します。公務員や私学の共済組合でも、だいたい同じです。
連続して3日休んだ後の欠勤日から支給
傷病手当金は、病気やけがのために労務不能になり、連続して3日間休むと、その次の欠勤日から支給されます。最初の連続3日の休みは「待期期間」と呼ばれ、公休日や有給休暇も含めて数えます。早退した場合も、待期期間の1日目にカウントします。
給与がゼロになった場合の支給額は1日あたり、直前の「標準報酬日額」の3分の2です。雇われている人向けの社会保険(健康保険、厚生年金保険)では、労働の対価の月額を等級区分にあてはめて「標準報酬月額」を決め、保険料の計算などに用いています。傷病手当金を計算するときは、最初の支給対象日の属する月を含めた以前1年間の標準報酬月額を平均したうえで、それを30で割って「標準報酬日額」とします。
標準報酬月額の平均が30万円の人だと、標準報酬日額は1万円になり、傷病手当金はその3分の2で、1日あたり6667円が支給されます。公休日の分も支給されます。
休んでいる期間に給与がある程度出た場合も、1日あたりの額が「標準報酬日額の3分の2」より少なければ、差額が支給されます。その健康保険に加入する前になった病気やけがで、加入後に休んだ場合も給付対象です。