退職日は絶対に休む、退職後に働かない

原昌平『医療費で損しない46の方法』(中公新書ラクレ)

第3の要件は「退職の日も、療養のために休んでいたこと」です。

退職の日は絶対に休む。これは極めて重要です。欠勤・休職でも、公休・有休でもかまいません。職場に出向いて事務手続きや私物の片づけをしてもいいけれど、出勤扱いにはしないことです。もし退職日に出勤したら、それだけで退職後は傷病手当金をもらえなくなります。たった1日働いたせいで、その後の権利が消えて大損をしてしまうのです。

第4の要件は「退職後、まったく働いていないこと」です。

退職後の傷病手当金は、1日でも働いて収入を得たら、就労可能とみなされて支給を打ち切られます。在職中と違い、1年6カ月の残り期間がたくさんあっても、支給は再開されません。ちょっとしたバイトをした結果、打ち切られることがあり、要注意です。

地域の国保には制度がない

雇われている人向けの健康保険や共済組合と違い、国民健康保険では、傷病手当金の給付事業をやるかどうかは、保険者の任意となっています。特定業種の自営業者でつくる国保組合の一部は実施していますが、地域の国保では、まったく行われていません。

地域の国保には、自営業者や農業、無職の人のほか、社会保険に加入できない労働者も入っています。労働時間・労働日数が少ない労働者や、小規模または任意適用業種(飲食・サービスなど)の個人経営で社会保険が適用されていない事業所の労働者です。

そうした労働者は、病気やけがで働けなくなったときに傷病手当金を受けられません。社会保障制度の「穴」の一つです。

原 昌平(はら・しょうへい)
読売新聞大阪本社編集委員 精神保健福祉士
1959年生まれ。1982年京都大学理学部卒業、読売新聞大阪本社に入社。京都支局、社会部、科学部デスクを経て、2010年から編集委員。1996年以降、医療と社会保障を中心に取材する。社会福祉学修士。大阪府立大学・立命館大学客員研究員。
(写真=iStock.com)
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