社会が変化しても「身体」は変わらない

また、「どの種類」のスキルや知識を資産化するかも重要な点です。これまでの経験はすでに資産化されているので、その上で、いかなる資産を増やしていくのかを戦略的に考える必要があります。どのようなスキルや知識がこれからの時代の中で必要とされるのかを見抜き、時間をかけて資産化していくのです。誰もが持っている資産であれば、有形資産の形成へとつながる転換の確率は低くなります。

無形資産の形成においても、「希少価値」戦略は侮れません。「強み」という曖昧な認識ではなく、資産として戦略的に管理していくのです。

(2)活力資産は、肉体的・精神的な健康と心理的幸福感・充実感から形成されます。テクノロジーの進展や大きな社会変化の中で、最も変わりにくいのは「身体」です。突発的な事故や災害等による想定外のダメージをのぞいて、身体の状態は時間をかけて維持されるものです。健康状態は自然と維持されるのではなくて、適切な食生活や定期的な運動習慣への投資によって、活力資産として形成されるのです。

そして、良好な身体を維持しながら、良好な人間関係を構築していきます。グラットンが別書『ワークシフト』で述べているのは、心の支えと安らぎをもたらす、前向きで親しい友人ネットワークからなる「自己再生のコミュニティ」です。活力資産とは、親しき仲間への「感情の投資」からも形成されるのです。

「自分は何者であるのか」を知る

(3)変身資産は、人生の途中で変化と新しいステージへの移行を成功させる意思と能力のことです。この変身資産は、グラットンらの『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』のなかで、最も独創的で鍵となる考え方だといえます。

会社が倒産するようなケースでは、外的な要因から「変身」を迫られます。それよりも多いのは、自ら仕事を辞めて次のステージへと歩んでいくケースですね。どちらの場合にせよ、突然の変化に翻弄されない準備が不可欠になります。

その時にポイントとなるのが、「自分とは何者であるのか」という知識です。やや専門的にいうと、「生得的で変わらない自己の分析」ではなく、「社会的に構築されるアイデンティティの分析」になります。

それは、急激な変化に直面し、自らを変えていく姿勢でもあります。この変化に適応する力を変身資産として捉えているのです。