元NHKディレクターが立ち上げた「注文をまちがえる料理店」
私の知人で、自らの北極星に向けて動いていると感じる人を紹介したいと思います。一人目は、NHKのディレクターだった(現在はフリー)小国士朗さん。「クローズアップ現代」や「プロフェッショナル 仕事の流儀」などを制作された方です。私が最初にお会いしたのは、連載記事の取材でお話を聞かせていただいた時でした。
当時の小国さんは、体調を崩し番組制作にドクターストップがかかったことから、番組制作からは退き、番組を話題化するためのPR戦略に取り組み、Webやアプリ、イベントなど、既存の手段とは違う方法で視聴者の関心を引き寄せていました。
そんな小国さんが立ち上げたのが「注文をまちがえる料理店」というレストランです。このレストランはニュースなどで話題になったため、ご存じかもしれません。認知症の方がスタッフとして働くレストランという、ユニークなコンセプトで運営されています。
「北極星」が見えていれば手段はなんでもいい
小国さんが注文をまちがえる料理店を始めるきっかけは、「プロフェッショナル 仕事の流儀」の制作で取材した介護福祉士の和田行男さんとの出会いにあったそうです。彼はそのときに自分自身の北極星を見つけ、より寛容な社会を目指してアクションを始めたのでしょう。
NHKのディレクターでありながら、レストランを作る。これは小国さんなりの北極星があったからできたことだと思います。小国さんは以前から「番組を作らないディレクター」と自分自身を説明されていましたが、私もクリエイティブの目的語を限定する必要はないと考えています。北極星が見えていれば、番組作りであろうがレストランであろうが、手段はなんでもいいわけです。
注文をまちがえる料理店は、2日間の試験オープンを経て、今はクラウドファンディングやNPOにより運営されています。自らのセンスを信じ、仲間とともにムーブメントを起こした小国さんは、非常にいいセンスメイキングの事例です。