自らが向かうべき方向を示す「北極星」

先日、『センスメイキング 本当に重要なものを見極める力』(クリスチャン・マスビアウ著)という本を読んだのですが、このタイトルを見たときに、自分が大切にしていることが言語化されたように感じました。37歳の転機からこれまでの私は、本当に重要なものを見極め、そこに向けて動こうとしてきた気がします。

本書には、「『GPS』ではなく『北極星』を」という印象的な言葉がありました。説明を引用すると、「北極星を頼りに航海するように行く先を見極めるセンスメイキングが大事」とのことです。自らが向かうべき方向を示す灯りを北極星と表現しているのでしょう。

これは偶然ですが、私は本書を読む前から、仕事の中でよく「北極星」という言葉を使っていました。とくにクリエイティブの世界では顕著なのですが、チームで動くときには、それぞれにやりたいこと、あるいはやりたくないことがあるものです。そこで「我々の北極星はどこにあるか」という話し合いをすることで、自然とチームがまとまり、目標に向けた行動を起こすことができます。

「やりたいこと」×「自分の強み」

ここで大切なことは、北極星とは、他者から与えられるものではなく、自分自身の感覚から導き出されるものであるということです。生き方や働き方の選択肢は無限にありますが、頭上にある無数の星のなかから北極星を見つけ出すようなセンスが大事なのでしょう。

私の場合、「やりたいこと」と「自分の強み」の両方が重なるところを意識しています。自分が積極的に行動することができ、かつ勝てる領域を見つけることが大切です。私が博報堂に入った理由も、昔から人を喜ばせることが好きだったことと、クリエイティブを活かせる仕事を求めたことにありました。

ただし、「やりたいこと」と「ただのわがまま」の違いは自覚しておく必要があるでしょう。会社にいる以上、ただのわがままが通ることはなく、何らかの貢献をすることが最低限求められます。したがって、会社に貢献できるポイントをつかみながら、新しいことにもチャレンジするバランス感覚が必要で、そういった意味でもセンスは求められるのです。